「みんな仲良く」に潜む不都合な真実

「みんな仲良く」は抑圧的?「嫌い」を言えない日本社会の息苦しさ_img0
 

著者は、「嫌い」の感情を持つことは不健全なことではないと訴える一方、一般的に良識的とされる考えや行動が健全とは限らないことも指摘しています。

「そもそも『みんな仲良く』ということ自体が抑圧なのだ。それこそが、強烈な同調圧力なのだ。集団ができれば、必ず好きな人間とそうでない人間が生まれる。10人近くいれば、きっと嫌いな人間が出てくる。通常、だれかに嫌われ、ほかの人には好かれるというパターンだろうが、なかにはみんなに嫌われるような人間もいる。それが当然なのだ。
『みんな仲良く』という思想は、人を嫌うことを禁止し、無理やりみんなをひとまとめにする。日本式集団主義のもっとも悪質な部分だと私は思う。これこそが、日本社会を息苦しくしている

同様に「思いやりを持って、人のいやがることをしないようにする」という良識もまた「精神的な抑圧の態度」だと述べ、そこに潜む傲慢さを指摘しています。

「他者を思いやる場合、自分と異なった価値観の人間を対象として想定していない。自分とまったく同じ人間が周囲にいると考えている。いや、もっといえば、自分と異なった感覚の人はいないと信じている。その前提に立って、『自分だったら喜びそうなこと』を思いやって行動し、言葉をかけるわけだ。しかも、思いやるという形で、相手にやさしく伝えるために、嫌いになってはいけないという圧力をかけているので、いっそうやっかいだ。やさしく丸め込んで、反対することを封じている。まさしく“やさしい暴力”」