オー!マイ・ボス!恋は別冊で』(以下、『ボス恋』)や、『ウチの娘は、彼氏が出来ない!!』(以下、『ウチカレ』)、『知ってるワイフ』などラブストーリーが多かった冬ドラマ。なかでも、『ボス恋』最終回は、「潤之介くん」「中沢先輩」「麗子さん」「奈未ちゃん」など登場人物の名前がTwitterトレンドを埋め尽くすほどの盛り上がりを見せました。

 

この『ボス恋』は、「ラブコメ枠」として定着しつつあるTBSの火曜22時枠で放送されたドラマ。タイトルに「恋」って入っているし、子犬系男子・潤之介(玉森裕太)とドSな先輩・中沢さん(間宮祥太朗)の2人の間で心が揺れていたし…生粋の恋愛ドラマだと思うのですが、ヒロインの奈未ちゃんは、「恋」よりも「仕事」を取り、最愛の恋人・潤之介からのプロポーズを断ります。ハリー・ウィンストンの婚約指輪もしっかりと返して……(推定400万円)。

 

結局、最終回で2人の仲は戻りますが、カメラマンの修行のために(3年間も!)カンボジアに行く潤之介について行かずに、奈未は日本に残って仕事を続けます。ドラマでは、その3年後の世界も描かれていました。なんと潤之介は、「向こうの仕事が落ち着いたら連絡する」と言っておきながら、一度も音沙汰がなかったらしい……。

「さすがに待たせすぎでは?」と平然と言う奈未に、「いやいや、さすがに待ちすぎでは!?」と言いたくなりますが、奈未は献身的な“待つ女”ではなく、“自立した女”だからこそ、待てるのかもしれません。「恋」が全てではないから、恋人からの連絡を待って、何度も携帯電話を見ることもない。「仕事」という基盤がある自立したヒロイン。ラブストーリーのはずなのに、本当に「恋は別冊で!」にしてしまうのが、近年生まれた新たなヒロイン像なのかも。

また、『ウチカレ』の碧(菅野美穂)も、最終回で2人の男性(それも、豊川悦司と[Alexandros]のボーカル・川上洋平からですよ!)からそれぞれ、「ニューヨークについて来て欲しい」「沖縄に一緒に住もう」とプロポーズされるものの、どちらもお断り。恋愛小説家で、“恋愛至上主義”のように見えた碧でしたが、「本当は思ってる。恋に走る女にはなれないし、ならないだろうってことを」と言っていました。



ちなみに、この『ウチカレ』を書いているのは、北川悦吏子さん。『愛していると言ってくれ』や、『ロングバケーション』など、恋愛至上主義で猪突猛進なヒロインを多く描いてきた北川さんが生み出すヒロインが、こんな台詞を言う日が来るなんて…と驚きました。ですが同時に、これが時代の変化のような気もするのです。

碧は、「オワコン」「時代遅れ」と言われながらも、なんだかんだ連載まで持っている有名な小説家で、都内にタワーマンションを購入できるほど、経済的にも“自立した女”。「王子様が迎えに来て、どこに行くか分からない白馬に乗ることはできない。私は、自分の行く場所は自分で決める。自分の足で歩く。もしくは自分でビジネスクラスを取る」と言うように、誰かが幸せにしてくれるのを待つのではなく、自分で幸せを掴み取りに行くーー。

そう考えると、“女性の幸せ=結婚”と言われていた時代の恋愛ドラマは、ある意味シンプルだったのかもしれません。もちろん、最愛の彼からプロポーズされて断ることだってないだろうし、「寿退社」はステータス。その時代のヒロインが持つ悩みは、白馬の王子様を見つけ、その人とどう恋をして、結婚まで持ち込ませるか…というものが多かったのに対し、現代の恋愛ドラマヒロインは、「恋愛」と「仕事」を天秤にかけて悩んだり、「幸せにして“もらっている”」自分に嫌気が差したり。恋が上手くいっているからって、オールオッケー!とはいかないわけです。

結婚しても、仕事を続ける女性や、そもそも結婚しない女性。はたまた、今季のドラマ『書けないッ!?〜脚本家 吉丸圭佑の筋書きのない生活〜』でも出てきましたが、夫に家事を任せて、自分が稼ぐ!という家庭だって増えてきています。選べる道が増えたからこそ、悩みも増える。他人に決められた物差しで、自分の「幸せ」を測られたくない!と思いながらも、「幸せ」の形が一つしかなかったら、悩むこともなかったのかな……なんて思う日もありますよね。

そんな時、『逃げるは恥だが役に立つ』のこんなシーンを思い出します。未婚のキャリアウーマンの百合(石田ゆり子)が、専業主婦の妹・桜(富田靖子)を見て、「なんだかんだ言って、いいわよね。お互いに、ただ1人の相手がいるっていうこと。誰にも選ばれない人生より素敵じゃない」と言うと、姪のみくり(新垣結衣)が、「お母さん、ずっと羨ましかったんだよ。好きな仕事して、綺麗で、活躍している百合ちゃんが」と返すのです。

隣の芝は青く見えるし、選ばなかった人生の方が素敵に見えるのは当たり前。けれど、他人から見たら、自分の選んだ道は「羨ましい」ものなのかもしれない。幸せの形が「結婚」だけではなくなっている時代だからこそ、迷うこともありますが、今ある幸せに感謝して生きていきたい。“自分だけの幸せ”を模索し続けているドラマヒロインたちが、そんなことを教えてくれるような気がします。

 


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