昔に戻りたがる男の子たち
未来の話をする女の子たち


『くれなずめ』は男子6名の青春時代を振り返るシーンが多く存在します。女性同士だけが集まったときとはまた違うだろうと思われる、男子だけの日常を覗き見する感覚がとても新鮮で面白い描写となっています。

前田:男の子っていつでもスーッと青春時代に戻れるんだろうなって思いますね。この映画の6人だけじゃなくて、どの男性でもきっとそうなんじゃないかな。いくつになっても男性同士のグループってきっと変わらない気がします。一方で、女性のグループはまた少し違いますよね。私もまさに10代の頃から10年以上仲良くしているのが元AKB48のメンバーたちなんですが、私たちは“未来の話”をすることが多いです。私もそうですけど、周りも子どもを産んでいるので「子どもが大きくなったら」とか「何年後にはこうしたいね」とか……。過去の話はほとんどしません。AKB48のメンバーだった時代は確かに私たちの中に存在はしているんですが、私たちにとっては過去のことだから、あの頃に戻りたいよねなんて話は出ませんね(笑)。そこは男女で明確に違うのかもしれないと、映画を観て思いました。

 

お互いに色々な感情を抱いた瞬間はあったかもしれませんが、山あり谷ありだった活動期間を一緒に走り抜けてきたからこそ、分かり合える大切な存在。​

 

前田:メンバーの存在は当時から私の中ではまったく変わってなくて、年齢を重ねて関係性が変化したとかもなくて、むしろ本当に今までずーっとそばにいてくれた同級生でもあり家族でもあり……という感じ。そういう友達がいるというのは、本当に幸せ。何かあったらみんなが一緒に考えてくれたり、共感してくれたり……。だから私、自分が独りぼっちだと感じたことがないんです。そういう意味で『くれなずめ』の男の子たちの関係性はとてもよく理解できますし、そのうえで作品が持つ“当たり前のことが当たり前のまま一生続くことはない”というメッセージにも納得です。

 

 

冒頭にもお話してくださったとおり、松居大梧監督の舞台を観て「いつか関わることができるなら」と願っていた前田さん。それが見事叶ったわけです。

前田:別の舞台を拝見したときもまったくの偶然でして、下北沢で監督を見つけてお声をかけたら、「駅前劇場で芝居やるから観に来ない?」と言われて「ぜひ!」と伺ったのがきっかけ。そしたらとても面白くて(笑)。松居監督は作品への愛がすごいんです。舞台の演出もして、映画も作って、しかも自分も出演して……。すべての作品を心から愛していらっしゃるんだと思います。あとはやはり演出の仕方が面白くて、「このシーンではみんながこういうふうに動いて!」と動きもバンバン決めてくださるところは舞台っぽいと思いますし、でも間違いなく映像での撮り方、見え方も同時に見えていると思うんです。すごく視野が広くて、様々な視点から作品のことを考えていらっしゃるんでしょうね。


『自分の人生には自分で責任を持つ』
それが、30代で掲げる目標のひとつです


舞台と言えば、前田さんは演出家の野田秀樹さん率いるカンパニー・NODA・MAPの第24回公演『フェイクスピア』への出演が決まっていらっしゃいます。映画とはまったく異なる分野ですが、その意気込みも聞いてみました。

前田:おっしゃる通り、舞台は映画とはまったく違っていて、演出の方によってこんなにも世界が変わるのは舞台だけじゃないかと思っています。しかもいろんなジャンルがあるので、その違いによって観に来てくださるお客様の雰囲気も違いますし、同じ劇場でもセットによって広さも感覚もまったく異なって感じることもありますし……。お稽古を入れると4カ月くらい舞台にどっぷり浸かる予定です(笑)。

そして、その公演中に30歳の誕生日を迎えるという前田さん。大きな節目とも言える年齢を迎える気持ち、そして女性として将来の目標について、最後に伺いました。

前田:30歳になるタイミングで舞台に立たせていただくことは、きっと大きな意味があるんだろうなぁと思っています。東京公演だけで50ステージ、全部で61公演あるのですから。それをやり遂げたあとの自分は何か変わっているんじゃないかな、むしろ変わらないなら意味がない、というくらいの覚悟を持って臨むつもりです。あと、将来的にやりたいこともたくさんあって。子どもを産んだあとも働いている女性は数多くいらっしゃると思いますし、私もその一人。私はあまりルールに縛られずにやっていけたらいいなという気持ちでいます。30歳を迎えるにあたっての目標のひとつが『自分の人生には自分で責任を持つ』なんです。子どもを守るのは絶対だからこそ、そこをきちんとやり遂げつつ自分の人生にどう責任を持つべきか。『母とはこうあるべき』という勝手な思い込みや周囲の目といったものに縛られないように、自分らしく人生を歩んでいけたらと思います。

 

前田敦子
女優。1991年7月10日生まれ、千葉県出身。AKB48のメンバーとして活躍し、2012年に卒業。女優として、NHK大河ドラマ『龍馬伝』、フジテレビ系ドラマ『花ざかりの君たちへ~イケメン☆パラダイズ~2011』などのドラマに出演。市川準監督の『あしたの私の作り方』(07年)で映画デビュー。2011年、映画『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』で初主演。2019年の主演映画『旅のおわり世界のはじまり』では、日本史上初となる「第72回ロカルノ国際映画祭」のクロージング作品として上映され、第11回TAMA映画賞最優秀女優賞、第43回山路ふみ子女優賞を受賞。NODA・MAP 第24回公演『フェイクスピア』(東京公演5月24日~7月11日、大阪公演7月15日~25日)への出演が決まっている。

<映画紹介>
『くれなずめ』
4月29日(木・祝)テアトル新宿ほか全国ロードショー

©2020「くれなずめ」製作委員会

映画『アズミ・ハルコは行方不明』、TVドラマ『バイプレイヤーズ』シリーズなどで注目を集める松居大悟監督が、オリジナルの舞台劇を映画化。友人の結婚式で余興を披露するために久々に集まった高校時代の旧友たちが歩く、結婚式の【披露宴から 二次会までの狭間】を描いた物語。

©2020「くれなずめ」製作委員会

主人公・吉尾和希を成田凌、その仲間たちを高良健吾、若葉竜也、浜野謙太、藤原季節、目次立樹らが個性派かつ実力派の俳優たちが演じる。

監督:松居大悟
脚本:松居大悟
出演:成⽥凌、若葉⻯也、浜野謙太、藤原季節、⽬次⽴樹/飯豊まりえ、内⽥理央、⼩林喜⽇、都築拓紀(四千頭⾝)/城⽥ 優、前⽥敦⼦/滝藤賢⼀ 、近藤芳正、岩松了/⾼良健吾
主題歌:ウルフルズ「ゾウはネズミ⾊」(Getting Better / Victor Entertainment)
配給・宣伝:東京テアトル
https://kurenazume.com

©2020「くれなずめ」製作委員会


<前田敦子さん着用アイテム>
トップス、スカート/ThierryColson(DIPTRICS)
ピアス/baebae(DIPTRICS)
シューズ/スタイリスト私物

<お問い合わせ先>
DIPTRICS tel. 03-5464-8736
pr@diptrics.com

撮影/目黒智子
 ヘア&メイク/菊地弥生(ひつじ)
 スタイリング/清水けい子(アレンジメントK/info@keikoshimizu.com
取材・文/前田美保
 構成/川端里恵(編集部)
 
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