しかし、“Mattメイク”が注目を集めると、MattさんのSNSにはたくさんの心ない言葉が届くように。マネージャーを務める母・真紀さんが、Mattさんの身を案じるほどでした。でも真紀さん曰く、Mattさんは思いのほかケロッとしていたのだとか。
「打たれ強いのは僕の性格でもあります。でも、今まで“もうダメかも”っていう弱音を吐くことがほとんどなかったのは、家族からの絶対的な愛が支えとなっていたから。SNSで批判的なコメントをわざわざ送ってくる人は、嫉妬や羨望もあるかもしれないし、自分もそうしたかったけどできなかった過去があるのかもしれない。だから、僕は頭ごなしにその人たちのことを否定はしません。そういう人たちにも幸せになってほしい。心が満ち足りていれば、酷い言葉を誰かに浴びせようなんて思わないはずだから」
“Mattメイク”は誤算だった?
望んだ未来じゃなくても全力で走る
激しい批判に晒される日々を乗り越えると、Mattさんが発信するメイクや美容に関する情報が女性たちの人気を集めるように。今やそのイメージが定着しつつあるMattさんですが、実はこれには大きな誤算もあったと言います。
「音楽をやりたくてこの世界に入ったけれど、注目されたのは僕の“顔”でした。スタジオに入るからメイクしただけなんだけど、周りからはトゥーマッチに見えたみたいで(笑)。そこから徐々に“僕ってメイクとか美容の存在なんだ”ということを自覚し始めたのですが、全然嫌な気持ちとかはなかった。むしろ、こうなったらメイクと美容のMattを確立しよう! と頭を切り替えたんです」
意図せぬハプニングも前向きに捉え、元々好きだったメイクや美容に力を注いだMattさん。すると、運命もMattさんに味方し始めます。
「僕なりにメイクと美容を極めると、雑誌やイベントでたくさん取り上げてもらうことができました。そんなことを一生懸命やっているうちにチャンスがめぐってきて、楽曲もリリースすることができたんです。その頃には、MattはMattであり、長年言われ続けた“桑田の息子”ではなくなっていました。夢や目標は叶える順番も大切なんだなって。今いる場所でベストを尽くせば、夢の方から近づいてきてくれることを実感しました」
「夢や目標が叶うことを前提に生きています」
Mattさんはそんな言葉を紡ぎ、軽やかに笑います。健やかにのびのびと羽を広げるMattさんに、子育てに悩む親に向けて“子ども”視点からのアドバイスをお聞きしてみました。
「ひとつは、可能性を伸ばしてあげること。ふたつめは、許してあげること。僕が両親にしてもらってすごく愛情を感じたのがこのふたつです。子どもがやりたいと考えていること、つらいと思っていることを知るには、当然ながら会話が必要です。言葉がなくても気持ちが伝わる魔法が使えたらいいんですが……それは僕にも無理でした。だから、家族でおしゃべりする時間を少しずつでも増やしていったらいいんじゃないかなって、僕は思います」
『あなたはあなたのままでいい 子どもの自己肯定感を育む桑田家の子育て』
著者:桑田真紀 講談社 1540円(税込)
野球選手・桑田真澄の息子として、生まれた時から野球選手になることを周囲から嘱望されていたMattさん。著者はひとりの母として息子と向き合い、“本当に子どもがやりたいことは何か?”を模索します。子どものありのままを見つめ、個性を尊重し、先回りせずに寄り添うーー。著者が綴る数々のエピソードには、子どもの自己肯定感を健やかに育てるためのヒントが詰まっています。
著者プロフィール
桑田真紀(くわた・まき)
東京都出身。夫は元プロ野球選手の桑田真澄氏で、2021年1月に15年ぶりに読売ジャイアンツの一軍投手チーフコーチ補佐として古巣に復帰。息子のMatt氏はタレント・歌手・モデルを通じ、ジェンダーレスや個性重視を具現化したような存在として、CMやTV、イベントで活躍中。現在著者はMatt氏のマネージャーを務め、本書が初の著書となる。
取材・文/金澤英恵
構成/山崎 恵
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