DV夫に我が子を会わせるために1万円
ところが離婚が成立したあとは弁護士さんとの契約は終了してしまうので、そのような面会交流は当然できません。離婚後の面会について相手からの具体的な提案もなし。「どうするつもりなのかな」と不安に思っていた矢先に申立てられたのが面会交流審判だったのです。
そして連載第1回にも書いたとおり、DVやモラハラに理解のある弁護士さんの数は多くはありません。DV事案は多いのに、DVをよく知り、被害者に寄り添える弁護士さんはごくわずか。それこそ地域ごとに1、2人しかいないのではと思うほど。Bさんの事案は特に悪質で執拗なケース。⼀般の弁護士では手に負えない事案でした。
しかしBさんは幸運にもやっとこの面会交流審判ではじめてDV事案に特に詳しい弁護士さんと巡り合うことができました。
平成24年に民法766条が改正され、面会交流についての取り決めをすることが明記されて以降、家庭裁判所は強硬な面会交流実施路線を取っています。
そのためDV事案の被害者であっても一律に面会交流を強いられるような裁判所の運用が今もなお続いている状況下、弁護士の中でもDV案件のプロに巡り会えたことはBさんにとって不幸中の幸いでした。おかげで家裁では相手の要求が却下され、相手が抗告し高裁まで争ったものの、子どもとBさんの負担が最大限少なく済むと思われる面会交流審判の決定を得ることができました。
とはいえ面会交流の実施は決定。頻度は3カ月に1回、数時間。支援期間の利用は認められ、どの機関を使うかはBさんが選択権を有することになりました。しかし支援機関利用の費用は折半、Bさんには養育費さえ支払われていないのに、です。
納得がいかず、無駄と知りつつ最高裁に特別抗告したBさんでしたが、もちろん棄却。この場合、最高裁へ特別抗告する間、面会交流を待ってもらえるわけではなく、高裁の決定が出てすぐ3カ月以内に支援機関を決めなくてはなりません。
そこで彼女は支援機関として一番有名なFPIC(Family Problems Information Center=家庭問題情報センター)に依頼することにしました。FPICは公益社団法人ではありますが、それでも当事者にとって料金は決して安くありません。申込金1万円、事前相談料金5000円〜、付き添い費用一回ごとに1万5000円〜2万5000円。費用を折半しても初回の実施までに数万円、その後も面会ごとに1万円前後の費用がかかることになります。
高裁まで争った弁護士さんには法テラスを通じての依頼だったので、30万円弱の支払いで済みましたが、「この大変な審判をそれだけの金額で受任してもらったことには申し訳なさを感じてしまいます」というBさん。しかし3年半でかかった弁護士費用の総額はもはや150万円を超えていました。
それに加えて、DV夫に我が子を数時間会わせるごとに1万円がかかるというのです。
(次回につづく)
前回記事「かさむ弁護士費用、支払われない婚費。経済DVをしておきながら、預金の分与まで求める夫」はこちら>>
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