20代後半、あの頃思い浮かべていた大人にはなれなかった自分––––––、
『コントが始まる』の放送開始前、予告でこの言葉が流れた時、心にズシンと響くものがありました。一つも後悔なく人生を歩めている! と胸を張れる人ってどのくらいいるんだろう……。
よく雑誌で、「タイムマシーンがあったらどうする?」という質問があるじゃないですか。それに、「今の自分に満足してるから、過去には戻りたくない!」と答えるタレントさんを見ると、「すごいなぁ」と思うとともに、「本当に?」なんて思っちゃったり。
本作は筆者のように、「やり直したいこと、後悔してることたくさんあるなぁ」と思う人にこそ、絶対に観てもらいたいドラマです。悩みながらも、頑張っている日々が美しいんだと、きっと肯定してくれるから。
夢を追うか?現実を取るか?どちらにも転べる「28歳」
『コントが始まる』は、春斗(菅田将暉)、瞬太(神木隆之介)、潤平(仲野太賀)からなるお笑いトリオ「マクベス」が、「10年経っても売れなかったら、解散する」と親に約束していた「10年目」を迎え、迷いながらも解散宣言をしてしまう。けれど、本当にこのまま辞めてしまっていいのか……と葛藤する姿を描いていきます。
「マクベス」のメンバーは、全員 “28歳” という設定が難しいところで。ある人からすれば、「まだ20代なのに(夢を諦めるなんて)もったいない」。ある人は、「もう20代後半だろ?」と言う。夢を追い続けても、現実を取るにしても、どちらにも転べる微妙な年齢だからこそ、迷いが生じるんだと思います。
そんな彼らを取り巻くのは、同じく “28歳” で、「マクベス」の隠れファンの里穂子(有村架純)や、その妹のつむぎ(古川琴音)。登場人物全員が、何かにもがきながらも懸命に前に進もうとしているのが印象的です。
第一話では、瞬太と潤平をコントに誘った春斗が、責任を感じ、「あいつらの人生狂わせちゃった」と里穂子に打ち明けるシーンがありました。そこで里穂子は、「3人で過ごしているあの時間は、後悔するような時間には見えませんでした。むしろ、こっちが嫉妬するぐらい輝いて見えました」と言います。このシーンにこそ、本作の魅力が詰まっているように感じました。
「マクベス」は、約束のタイムリミットを迎え、窮地に立たされているはず。それにも関わらず、喧嘩をしていても泣いていても、どこか羨ましい。“仲間になりたい!” と思ってしまう。それは、「マクベス」の3人が必死に夢を追いかけているからかもしれません。たとえ夢を叶えることができなかったとしても、全力でもがいている日々こそが一番美しいのだと気付かせてくれます。
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