男性の「テヘヘ」ポーズと
「冗談だって」に潜む男尊女卑とは?


『モキシー』でも、こんなシーンがありました。
男子生徒は女子生徒を「一番ヤリたい女子」「一番おしりが綺麗な女子」などとランク付けするのですが、それを見て笑えない女子生徒たちに、彼らは「熱くなるなよ、冗談なんだから」というニヤニヤした態度を取るのです。

そうすると女子たちは、そんな大したことじゃないのかなと思ってしまって、つい怒りを飲みこんでしまう……。

 

でも、彼女たちは怒っているのです。本気で。そして、ランク付けなんてやめてほしいと思っているのです。心の底から。同じように妻たちだって、本当は、当たり前のように家事を押し付けられること、当たり前のように下に見られることに、本気で腹を立てているのです。だから私は言いたい。女性たちの真面目な怒りをお願いだから笑いにしないで、と。

わたくし事ですが、まだ私が高校生だった頃、我が家には、父がいつも靴下を裏返して脱いでは母が文句を言う、という恒例のやり取りがありました。裏返して脱がれると、母は汚れた靴下に手をつっこんで元に戻さなけばならないので、それがたまらなく嫌だったのです。

そしてその日もいつものように、母が「もう、お父さん、靴下は裏返して脱がないでってあれほど言ってるでしょう!」と怒っていました。すると父は、何と、「だってめんどくさいんだもーん」と、ぶりっこしたのです。その態度に母は、何だか煙に巻かれてしまったようで、「もう!」と戸惑いながらも笑って諦めていました。

……ですが私が見逃せなかった。さすがにあまりに母をバカにしていると思ったのです。私は思わず、「お父さん、それはお母さんに失礼だ。お母さんは下女じゃないんだから」と真顔で注意したのです。

さて、そのとき父はどうしたかというと……。正直、言ってしまってから「あ、怒るかな」と一瞬思ったのですが、おそらく父は、人生で初めて(と思われる)女性からの反撃に免疫がなかったのでしょう。どうしていいか分からなかったようで、ちょっとオロッとして、目を合わせずそそくさとどこかへ行ってしまったのでした。

結局その後も父は靴下を裏返して脱ぐことはやめませんでしたが、きっと、一抹のやまさしを覚えながら裏返った靴下を洗濯機に入れていたはず。……と、私は信じています。

妻たち、そして全ての女性たちの怒りは、何ら「カッカすんなよ」とからかわれることでもなく、ましてや「おいおい、大したことじゃないだろ」と流されることでもない。『モキシー』の若く真っすぐなエネルギーは、私にそんな当たり前のことを思い出させてくれました。

たしかに『モキシー』のフェミニズム描写は、オシャレさとか気の利いたひねりとか、そんな洗練されたものはありません。
「嫌なの!」「私はこうしたいの!」と本能のままに声を上げ、女同士、ただ肩を組んで「ウォー!」と突進していく。そんな無骨な戦い方です。でも、たまにはこんなストレートなメッセージで、若かったあの頃のように胸を熱くするのも良いものだと思ったのでした。


文/山本奈緒子 構成/藤本容子


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