必ずしも「五十肩=老化のサイン」ではない
この病気のメカニズムの詳細については、残念ながら分かっていません。仮説として、50代に入ると何らかのきっかけで肩関節の周囲に炎症が起こるようになり、炎症の結果として肩関節の周りに線維質ができてしまって動きを制限するようになるというメカニズムが考えられています。
この病気を発症する人の症状を追いかけてみると、発症から数カ月の間、夜を中心に肩の痛みを感じるようになり、その後、痛みの改善とともに今度は肩を動かしづらい時期を迎えます。その後は少しずつ動かせるようになり、1〜2年かけて元の状態まで回復するという経過を辿るのが一般的です(参考文献7)。
ここで重要なのが、多くの方が数年をかけて「回復する」という事実です。数%の人は長期にわたって深刻な障害が残る可能性があることも報告されていますが(参考文献8)、大部分の人はその後の人生でそれを抱えることはありません。
「五十肩=老化のサイン」と捉えてしまうと、これはこの先一生付き合っていかなければならないのか、と思われるかもしれませんが、必ずしもそうではありません。多くの場合、一時的な炎症性の病気であって、それは必ずしも「老化」ではないのです。
なお、痛みを感じる時期には痛み止めの飲み薬や炎症を抑える局所注射、関節が動かしづらくなる時期にはリハビリテーションが主な治療として用いられます。他の病気である可能性を確認することも大切なので、症状が続いてお困りの方は「五十肩」と早合点して決めつけずにお近くの医療機関までご相談ください。
参考文献
1 Rizk TE, Pinals RS. Frozen shoulder. Semin Arthritis Rheum 1982; 11: 440–52.
2 Walker-Bone K, Palmer KT, Reading I, Coggon D, Cooper C. Prevalence and impact of musculoskeletal disorders of the upper limb in the general population. Arthritis Rheum 2004; 51: 642–51.
3 Zreik Nasri H. Adhesive capsulitis of the shoulder and diabetes: a meta-analysis of prevalence. Muscles Ligaments Tendons J 2016; 6: 26–34.
4 Sung CM, Jung TS, Park H Bin. Are serum lipids involved in primary frozen shoulder? A case-control study. J Bone Jt Surg - Am Vol 2014; 96: 1828–33.
5 Cohen C, Tortato S, Silva OBS, Leal MF, Ejnisman B, Faloppa F. Associação entre ombro congelado e tireopatias: Reforçando as evidências. Rev Bras Ortop 2020; 55: 483–9.
6 Riley D, Lang AE, Blair RDG, Birnbaum A, Reid B. Frozen shoulder and other shoulder disturbances in Parkinson’s disease. J Neurol Neurosurg Psychiatry 1989; 52: 63–6.
7 Reeves B. The natural history of the frozen shoulder syndrome. Scand J Rheumatol 1975; 4: 193–6.
8 Hand C, Clipsham K, Rees JL, Carr AJ. Long-term outcome of frozen shoulder. J Shoulder Elb Surg 2008; 17: 231–6.
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