中学生以降の性教育は「エロ」となり、手遅れ


「性について幼児期から話しておいて良かったと思ったのは、彼らが小中学校で性教育を受けた思春期に、ごく冷静に『性』について受け止めていたのを見たときです」

当時の息子さん曰く、学校で「性」について理解している同級生は少なく、皆騒いだり恥ずかしがったりしていたそう。けれど家庭で予備知識を備えていた息子さんは、「僕は知ってたから、別に何とも思わなかったよ」と冷静な反応を見せてくれたと小島さんは言います。

「小学校中学年以降になると、性教育は『エロ文脈』に絡めとられるので手遅れなんです。『え、股間から血が出るの?エロ〜いw』となる前に、先にきちんと知識を入れておくのが大事。

女性の身体や生理が家の中でタブー視されていて知識ゼロの状態だと、思春期に突然情報が入ってきたとき、一気に女性の股間に対して謎のファンタジーを作り上げてしまう。でも幼少期からお母さんが女性の股間まわりについて自然に話したり体調を伝えていれば、それはごく普通の出来事、『人体ってすごい!』という『生物』の文脈で認識されます」

きちんとした予備知識があれば、その後に『エロ文脈』が加わったり、子ども同士で性的な話をする年齢になっても、『エロ』だけで女性器に対するイメージは作り上げられないのです。

「お母さんが女性器や生理について『恥ずかしいもの』『エロいもの』という態度を見せないのが一番です。例えば息子に『どうしてママにはちんちんがないの?』と聞かれたとき、『そういう話はしないの!』『ママ恥ずかしいからやめて!』と言ってしまうと、それは恥ずかしい話なんだと、敏感な子どもはお母さんの態度を見てエロ文脈を学習します」
 

子どもに「性=エロ」の呪いをかけないで!


また近年、男子の育児で何かと話題になる「ムキムキ体操」についても小島さんはこう語ってくれました。

「我が家でも息子たちのおちんちんは包皮を無理のないところまで剥いて洗い、清潔にしていました。汚れが溜まると腫れることがありますよという小児科の先生の指導の下です」

 

「でも、『剥けていないと馬鹿にされて可哀想!』『大人になって女の子に見られて恥ずかしい思いをする』という理由で剥くのは、もう『エロ文脈』。仮性包茎は健康上は全く問題ありませんが、広告の影響で『恥ずかしいこと』とされているんです。それをまんまと信じている親の態度を見て、『包茎はモテない』と刷り込まれた男の子は、自分の体を恥じて悩み、美容外科手術を受けることも。我が子にそんな呪いをかけたくないですよね」

 

悪気はなくても、無意識のうちに我が子に呪いをかけてしまう親は多くいるように思います。同じ子どものための行為でも、「エロ」と「健康」のどちらで接するのかにより、子どもの認識に大きな差が出てしまいます。

「性教育についてはきちんと話題に出して、子どもが質問してくれたタイミングでしっかり向き合う。『人体ってよくできてるよね』『不思議だね』と、人体をリスペクトして、生物・健康の文脈で話します。『性』は大切なこと。生理も、『命に対するリスペクト』をお母さんが態度で示す。恥ずかしいもの・汚いものとして語ると、言葉より態度で伝わるんです」

そして当然ながら、お父さんの態度も子どもに強い影響を与えます。

「そもそも生理について触れもしない家庭は多いかもしれませんが、家の中でお父さんが『女って、生理のときは機嫌が悪くなるんだよ』『面倒だから男は大人しくしておこう』なんて言っていたら最悪です。

悪気はなくても、生理に対する無知と偏見に基づいた先入観が、女性蔑視や女性差別のもとになります。それを息子に学習させてしまうのは、とても罪深いことです。父子で正しい知識を学んで欲しい。そうしたら、息子は周りの女性に対する想像力と思いやりのある人に育ちますよね」

まだまだ子どもの前でタブー視されがちな性教育。

積極的に教えようと思っても、知らぬ間に「エロ」要素を含んでしまったり、「恥ずかしい」という態度を拭えない親御さんも多いかと思います。

まずは大人がしっかりと性についての知識・認識を学び直すことが大事ですね。

インタビュー後編では、小島さんご自身の生理のエピソード、話題のミレーナ体験、婦人科のかかりつけ医の重要性などを公開します!
 

写真/鈴木愛子
取材・文/山本理沙

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