「どこにも居場所がない」という言葉はよく耳にしますが、「どこにも居所(イドコロ)がない」というセリフはあまり聞かないと思いませんか? それもそのはず。家庭や学校など特定のコミュニティへの帰属が前提となる「居場所」とは異なり、「イドコロ」は自分ひとりでも成立するものだからです。なければ自分でつくってしまえばいいだけの話なのです。
思考の健康さを保つ場を研究し、大学でも教鞭を執る伊藤洋志さんは、著書『イドコロをつくる:乱世で正気を失わないための暮らし方』で、「イドコロ」が果たす役割や「イドコロ」のつくり方を、実例を交えて紹介しています。
特に現在のコロナ禍のような世の中では、「イドコロ」を持つことの重要性が増しているのだとか。一体それはどういうことなのか? 気になる中身をさっそく覗いてみましょう。
悪質な情報から身を守ってくれる「イドコロ」
伊藤さんによると、コロナ禍のような乱世では人間は正気を失いやすいそうです。陰謀論や噂を信じ込み、直接会ったことのない人をバッシングする行為がその典型ですが、それは物語化されたものを信じやすい、という人類の習性に起因しているとのこと。特に乱世ではこの習性を悪用して間違った物語を流布する人が増えるので、それが道理に反する行動であったとしても、「正しい」と信じ込んでしまう人が増殖するのだとか。そのような悪い情報に踊らされそうな状況から守ってくれるのが「イドコロ」であると伊藤さんは主張します。
「何か厳しい状況があっても、心が落ち着き、平静を一時でも取り戻せる場を持っていれば、客観的な視点を失わずに済む。なんか変だなと思っていたことを友人に話したら、『ああ、あの違和感は正しかった』と修正できる。頭に血が上っても、一呼吸おいて自然の多い公園を歩けば一歩引いて見直せる。イドコロとは自己をいい方向に変えるものである。様々なイドコロを持って、手入れをしていくことはこの乱世において正気を失わないために大いに役立つ」
伊藤洋志さんがつくった&見つけた「イドコロ」
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