薬の飲みすぎでご飯が食べられなくなる
また、薬の副作用が思わぬ食欲低下の原因になっていることもあります。医師としてよく遭遇する例では、認知症の薬が挙げられます。認知症の薬には、認知機能の低下のスピードを抑えるという効果が期待されます。一方で、コリンエステラーゼ阻害剤と呼ばれる種類の薬の最大の副作用に、食欲低下を含む消化器症状や体重減少があります。
この薬は実際に、偽薬との比較試験でも体重減少につながることが示唆されています(参考文献1)。「ずっと飲んでいるし、副作用はないと思っていた」などという声を聞くこともありますが、薬を減らしたりやめてみたりしたら、実際に食欲が回復したというケースにも遭遇することがあります。馴染みのある薬に、無意識に健康を害されているということもあるのです。
薬自体の副作用ではなくても、飲んでいる薬が多すぎるということ自体が「副作用」となって食欲低下につながっているケースもあります。
1日に3回も4回も飲まなければならない薬が複数あり、合計すると30錠も40錠も飲んでいるという患者さんもいます。それだけの薬を飲みこむためには、それ相応の水も飲まなければいけません。少し想像をすれば、それだけでご飯を食べられる量が減ってしまうということがお分かりいただけるのではないかと思います。
あるいは、やせや食欲低下の背後にまだ診断されていない病気が隠れている場合もあります。胃の病気や食道の病気ならわかりやすいかもしれませんが、思わぬ病気が食欲低下の原因になることもあります。
「最近、食事が十分にとれなくなってしまった」
そんなご家族がいらっしゃる場合は、まずこのような問題がないかを見直し、もし問題があればそれに対処するという視点が大切になります。
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参考文献
1 Sheffrin M, Miao Y, Boscardin WJ, Steinman MA. Weight Loss Associated with Cholinesterase Inhibitors in Individuals with Dementia in a National Healthcare System. J Am Geriatr Soc 2015; 63: 1512–8.
写真/shutterstock
前回記事「糖質制限や塩分制限がいいとは限らない。「健康な食事」は人それぞれ」はこちら>>
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