オンラインセミナーや個別相談によって、妊娠・出産・育児に悩む女性をサポートしている「じょさんしONLINE」
代表の助産師である杉浦加菜子さんは、海外での妊娠・出産・育児をきっかけに、「誰ひとり取り残さない」をモットーにオンラインでの相談やセミナーの開催といった活動をスタートさせました。
このサービスの提供を通じて、すべての女性が安心して快適に過ごすためには、社会全体を変える必要があると痛感したそう。
生理についての無理解も、大きなテーマのひとつだといいます。
 

「どうせ言ってもわからない」女性と、
「聞いたところで、どうしていいかわからない」男性

 

杉浦さんが主宰する「じょさんしONLINE」は、おもに妊娠・出産・育児をしている女性とそのパートナーに対して、オンラインセミナーや個別相談を通じて悩みや不安を解消するサービスです。
日本で子育てをしている日本人の母親だけでなく、海外で暮らす日本人や日本で妊娠・出産・育児を経験する外国人たちへもサポートを展開。
コロナ禍における育児の孤独を、助産師の立場から解決に導いています。

助産師として活動する杉浦さん。

「2019年1月、当初は私一人で活動をスタートしました。きっかけは、夫の仕事の関係で、オランダで妊娠・出産・子育てを経験したこと。
現在は法人向けのサービスとして、メンタルヘルスや月経、女性疾患などの健康課題、妊娠期のケアから復職への支援にも手を広げています」

たとえ生理不順や重い生理痛に悩んでいても、プライベートな問題だから、と一人で抱え込む女性が多いそう。「誰かに相談するものではない」という声を、よく聞くといいます。

「とくに上司が男性の場合、『どうせ、言ってもわからない』と思う方がほとんどですね。いっぽう上司のほうも、『聞いたところで、どうしたらいいのかわからない』という方が多い。
ですからまずは、男性の方々にしっかりとした知識をもってもらうことが大切だと考えています」

 


会社の風土によって、生理の捉えられ方はまちまち


女性は妊娠・出産、生理や更年期によるホルモンの変化で、さまざまな不安や不調に襲われます。こうした時期をストレスなく過ごすためには、男性の理解も必要です。

「『生理の貧困』がメディアで取りあげられるなど、近年は生理に対する注目が高まっています。けれどもまだまだ、『生理は隠すべきもの』と考えている女性は多いでしょう。

欧米では、小さいころから、『女性には生理があって、調子が悪い時期がある』ということを教わってきています。
ですから調子が悪そうな女性に対して、男性が『つらそうだね』と温かい飲み物を差し出すなど、自然とサポートする姿勢が身についているのです」

けれども日本では、生理用品のCMを見て育った男性が「若い頃は『女性は身体から青い液体が出るんだ』と思い込んでいた」と、冗談かと思うような話があるほど、生理に関する知識の浸透が遅れています。
そうした事態を打開しようと、「じょさんしONLINE」では、企業に向けたセミナーを実施。女性の身体やホルモンの変化などを伝えているそうです。

コロナ禍でオンラインのセミナーの需要も。

「おもに管理職の方々に向けて『女性社員の不調に対して、どう対応をしたらいいのか』などをお話ししています。男性たちの反応は、会社の風土によってまちまちなのが現状です。
LGBTQやジェンダー研修などを取り入れているある外資系の企業では、どんどん活発な意見が出てきて、とても積極的でした。
いっぽう日本企業では、男性の参加率が低い印象です。ある会社では、100名の参加者のうち男性の参加者は10名でした。
今後、社員たちがより積極的に女性の身体の仕組みについて学ぶことで、社内の理解が進み、働きやすい環境づくりにつながっていくといいな、と思っています」

 
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