ミモレでも取り上げ、大きな反響を呼んだ女性アスリートの生理問題。
お話を伺った元競泳日本代表の伊藤華英さんは、この春、一般社団法人スポーツを止めるなの理事として『1252プロジェクト』を立ち上げ、女子学生アスリートに向けて生理にまつわる情報を発信しています。
そんな伊藤さんが、新たにプロジェクトの一環としてYouTube番組を立ち上げることに。番組名は『Talk up 1252』。
国立大初の女性アスリート外来を開設した産婦人科医でスポーツドクターでもある能瀬さやか先生と伊藤さんが、毎回ゲストを招いて、女性の身体とスポーツをテーマに語り合います。
7月某日には、能瀬先生と伊藤さんによる番組のキックオフ対談が。今後改善していくべき、様々な問題、課題が見えてきました。
医師が教える「重要な大会に生理が重なってしまうとき」の対処法とは?
現役時代、オリンピック出場という大舞台と生理期間がぶつかってしまった経験を持つ伊藤さん。
その内容については前回のインタビューでも語って頂きましたが、この日の対談も伊藤さんのそんな体験談からスタート。
2008年の北京オリンピックで、8日間の全日程が生理と被ってしまったこと。本番の3ヶ月前に対策を考え始め、ピルで生理をずらす選択をしたところ、体重が約5kg増え最悪のコンディションで競技当日を迎えてしまったこと。そんな経験を振り返りながら語り始めました。
伊藤さん(以下、敬称略):当時の環境では、生理は病気ではないのだから、選手が各自で向き合うのが当然、という風潮がありました。
私も自分のできる範囲で対処するしかないと考えていたので、中用量ピルで生理をずらすことに。
しかし、それが裏目に出てしまい、体重が増えるなどコンディションを崩して、力を出し切れずにとても悔しい思いをしてしまったのです。
能瀬先生(以下、敬称略):私のところに来る相談でも、大きな大会に向けて生理をずらしたいという要望は多いですが、直前にそういった手段を選ぶと何が起こるかわからないので、もっと早い段階から対策を施しましょうとお伝えしています。
最近では、中用量ピルで一時だけずらす方法より、低用量ピルや他の薬を使って、年間を通して生理をコントロールする選手が増えてきました。
伊藤:2008年当時にも低用量ピルはあったのでしょうか?
能瀬:そうですね、日本では1999年に認可されています。
伊藤:そうですか(苦笑)。
ただ2008年の当時のことを思うと、私を含め日本代表選手でさえもそういった情報に疎かったという状況があります。
生理についてオープンに話す習慣もなかったので、コーチに相談しようとすら思いませんでした。
能瀬:確かに2012年のデータでは、「トップ選手の66%が、生理をずらす方法さえ知らない」という結果が出ています。
さらに、2012年に国立スポーツ科学センターに勤務しトップアスリートを診察した際、やはり過去2回もオリンピックに出場した女子選手がその2回とも生理に当たってしまったと聞いたことも。
これはなんとかしなければならないと使命感が湧いた瞬間でした。
伊藤:私も、今でこそ自分の身体について、生理前は体調が悪く、生理期間に入ってしまえば安定するとわかっていますが、現役時代はそのサイクルさえ把握していませんでしたね……。
能瀬:現在でも、日本のトップ選手のうち91%が、生理周期が競技時のコンディションに影響を及ぼしていると答えています。
今は様々な解決法がありますしピルも種類が増えていますから、ぜひ医療機関に相談して欲しいと思います。
ただ、徐々にですが、対策を取る日本人選手は増えていて、低用量ピルで日常的に生理をコントロールしている選手は、2012年のロンドンオリンピックの時には7%、2016年のリオデジャネイロの時には27%という調査結果も出ています。きっと東京オリンピックの調査結果では、また少し増えているのではないでしょうか。
【写真】体調の変化でもベストを尽くした北京五輪
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