米倉涼子さんが見た、最新のおすすめエンタメ情報をお届けします。
トニー賞4冠を受賞している『イン・ザ・ハイツ』は、ニューヨークに行っているときにチケットがとれなくて、いつか観たいと思っていたミュージカルなんです。映画化されたと聞いて、スクリーンで観ることを楽しみにしていました。
感想をひとことでお伝えするとすれば、心と魂を揺さぶって生命力に火をつけてくれるミュージカル! ミュージカル映画を観た満足感に浸りながら、早くブロードウェイで生の舞台を観たいなという気持ちも湧き上がってきました。
舞台となっている場所はニューヨークのワシントンハイツ。マンハッタンの北側に位置するラテン系の移民が住んでいる一角で、観光客はあまり訪れないエリアです。
この映画では実際にこのエリアでロケが行われたそうで、アルゼンチンを旅したことのある私が感じたのは、南米の街と同じ空気!
冒頭では食料雑貨店を営むドミニカ出身の主人公のウスナビが歌と踊りにのせ、自分たちのルーツや街を案内してくれるようなシーンもあります。
最初から音楽が鳴り止むことがなく、ものすごい数のダンサーたちが街角で歌って踊るシーンはまさに大迫力。群舞を見ながらブロードウェイやハリウッドのダンサーの層の厚さを感じたり、どれほどレッスンを重ねたんだろうと思ったり……。
舞台版の『イン・ザ・ハイツ』を作ったリン=マニュエル・ミランダが手がけた『ハミルトン』はブロードウェイで観たのですが、音楽はすべてヒップホップ。それにくらべると『イン・ザ・ハイツ』は、ヒップホップだけではなく、サルサなどいろいろなラテン系の音楽がミックスされているところが好き! 自分に合うリズムを探すことができるミュージカルだと思います。
ドミニカに帰ってバーを開きたいと思っている主人公や、ファッションデザイナー志望のバネッサ、一流大学で差別されて挫折を経験したニーナなど、夢を追いかけている若者たちの物語は、わかりやすくてまっすぐ。
貧しくて大変なこともあるけれど、日常のなかのひとつひとつのことを大切にして生きているから、それが感動につながるんですよね。“いっこ”を大事にしながら幸せを求める感覚が、宝くじを数枚だけ買うシーンからも伝わってきました。
そういえば登場人物が話す英語がわかりやすくて、ほとんど字幕を見ないで楽しめたんです。英語とスペイン語のセリフが混ざっているので、スペイン語を勉強中の私にとっては、こういう表現があるんだ!とか、氷のことはイエロっていうけどかき氷はまた違うのね、なんて発見の連続。
『イン・ザ・ハイツ』は歌、音楽、語学と今の私が興味を持っていることがすべて入っている作品。バーチャルでもつながれる時代に、体が動いて心が通いあう瞬間を見せてくれるミュージカルはやっぱり最高だなと改めて感じました。
<映画情報>
『イン・ザ・ハイツ』
全国公開中
実在する移民の街、ニューヨーク・ワシントン・ハイツで育ったウスナビ、ヴァネッサ、ニーナ、ベニーはつまずきながらも自分の夢に踏み出そうとしていた。ある時、街の住人たちに住む場所を追われる危機が訪れる。突如起こった大停電の夜、街の住人達そしてウスナビたちの運命が大きく動き出す。監督は『クレイジー・リッチ!』のジョン・M・チュウ。
監督:ジョン・M・チュウ
製作:リン=マニュエル・ミランダ
出演:アンソニー・ラモス、コーリー・ホーキンズ、レスリー・グレース、メリッサ・バレラ、オルガ・メレディス、ジミー・スミッツ
全米公開:2021年6月11日
原題:In the Heights
製作国:アメリカ
配給:ワーナー・ブラザース映画
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構成/片岡千晶(編集部)
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