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アルゼンチンを旅した米倉涼子が語る、ヒット映画のリアル『明日に向かって笑え!』_img0
『明日に向かって笑え!』 全国順次公開中 (c)2019 CAPITAL INTELECTUAL S.A./KENYA FILMS/MOD Pictures S.L.

今回はアルゼンチンで大ヒットを記録したという『明日に向かって笑え!』を紹介したいと思います。
舞台となっているのは2001年ですが、なんだかもっと昔の日本の物語みたい……と感じる人もいるかもしれません。
でもアルゼンチンを旅してブエノスアイレス以外の田舎にも足を運んだことがある私にとっては、とてもリアリティのある映画でした。

 

主人公は小さな田舎町でガソリンスタンドを営む愛妻家のフェルミン。寂れた町を復活させようと、町民たちの資金を集めて農業施設を作るために動き出します。
みんなの貯金を銀行に預けた翌日、金融危機が起こって預金が凍結されることに。しかも銀行の支店長と弁護士によって預金を騙し取られたことが発覚します。
希望いっぱいだった彼らはすべてを失いますが、このまま泣き寝入りはできないとリベンジ作戦を決行する! というストーリーです。

この映画で町民がお金を失った直接の理由はインサイダーだけれど、アルゼンチンは経済危機に直面して預金の引き出し制限などを行ってきた国。
銀行を信用することができないからとタンス貯金をしている人も多いそうです。ペソは価値がないのも同然で、家を買うためにはドルを用立てる必要があると聞きました。

しかも古くて小さな家を買って、自分たちで壁を塗ったり電気を通したりするのは、当たり前。車のエアコンが止まると道路の脇に寄せて、自分で潜って修理してしまいます。
旅をしながらそんな風景を見てきたので、この映画の登場人物がリベンジ作戦のためにいろいろなものを自分たちで作ったり直したりする姿を見て、そうそう、こんな感じだった! と納得しました。


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アルゼンチンでこの映画が動員数No.1になったのは、登場人物たちのように小さなコミュニティのなかで家族や親類、友人とのつながりを大事にして暮らしている人が多いからかもしれませんね。
助け合いながら夢を現実に変えていく、そんなパワーがもらえる映画です。

主演のリカルド・ダンはとても人気のある俳優さんで、日本でも『瞳の奥の秘密』などが公開されています。
ちなみに私のお気に入りのアルゼンチンの俳優は、TV局Canal13のプログラムディレクターでもあるアドリアン・スアル。
パートナー交換をめぐるコメディ『愛と情事のあいだ』(原題:『Dos Más Dos』)と、ふたつの家庭で二重生活を送る男を演じた『Corazón loco』は、笑えてちょっとおしゃれで肩の力を抜いて楽しめる映画なので、ぜひチェックしてみてください!

 

アルゼンチンを旅した米倉涼子が語る、ヒット映画のリアル『明日に向かって笑え!』_img1
 

<映画情報>
『明日に向かって笑え!』
全国順次公開中


舞台は2001年のアルゼンチン。隣人との繋がりが残る小さな田舎町で、放置されていた農業施設を共に復活させるため、住民たちが貯金を出し合うことに。だが、現金を銀行に預けた翌日、金融危機で預金が凍結。しかも銀行と弁護士に状況を悪用され、お金を騙し取られてしまう。盗まれた財産を取り戻すべく計画された、庶民のリベンジ作戦とは?

監督・脚本:セバスティアン・ボレンステイン 
原作・脚本:エドゥアルド・サチェリ『瞳の奥の秘密』
出演:リカルド・ダリン『瞳の奥の秘密』、ルイス・ブランドーニ、チノ・ダリン『永遠に僕のもの』、ベロニカ・ジナス他
配給:ギャガ 
後援:アルゼンチン共和国大使館 協力:インスティトゥト・セルバンテス東京
原題:La Odisea de los Giles/2019/アルゼンチン/スペイン語/カラー/シネスコ/5.1chデジタル/116分/字幕翻訳:原田りえ
公式サイト:gaga.ne.jp/asuniwarae       
(c)2019 CAPITAL INTELECTUAL S.A./KENYA FILMS/MOD Pictures S.L.

取材・文/細谷美香
構成/片岡千晶(編集部)

 

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