初潮と同時に、婦人科のかかりつけ医を持てると理想的


伊藤:とにかく「10代から生理の知識を得ることが肝心」とのお話ですが、『1252プロジェクト』も『一般社団法人 スポーツを止めるな』という母体があり、学生アスリートに対して正しい情報を届けることを目的に活動しています。
現場には男性指導者も多いですし、家族の理解も必要なケースもあります。そのため女性アスリートからの発信だけではなく、男性サイドからの発信など、色々な方と協力して活動を推進していきます。
もちろん、信頼できる情報をお届けしたいので、これからもできる限り医療機関のみなさんと連携していけたらと考えています。

オリンピック中に生理になった体験談「元日本代表選手と医師が伝えたい正しい対処法」_img5
 

能瀬:私たち医療機関も、選手や指導者向けのセミナーを開催していますが、実際にはまだまだ正しい知識を現場まで届けられている手応えを感じられません。国際的に活躍されたトップ選手達と連携することはとても心強いです。みんなで協力して生理についての啓発をしていくのは、重要な活動になりますね。

 

伊藤:正しい情報のプラットフォームになると同時に、今後の目標としては、世の中の生理に対するタブー感や偏見も無くしていきたい。

今はまだ、女子学生が産婦人科に行くのに敷居が高い雰囲気があります。
いくら大人が「気軽に行けばいいよ」と言っても、10代の女の子にとってはそうは思えないのです。

例えば、産婦人科が入っているビルのエレベーターに母娘で乗っていたら、後から乗ってきたご婦人に「大変ね」とあたかもお子さんが妊娠したかのような目を向けられたという話を聞いたことも。
少しでもそういった偏見を無くし、「初潮を迎えたら当たり前のように産婦人科に行く」ことを日本の習慣にしていきたいですね。

能瀬:偏見ということで言うと、保護者世代のピルへの偏見も根強いものがあります。
日本ではピルは避妊薬という印象が強いので、10代のお子さんに飲ませるのは抵抗があると感じる方もいらっしゃるんですね。
親御さんや指導者は、学生から生理の相談を受けた際に、自分の経験や知識を押し付けるのではなく、ぜひ専門家の受診をすすめて頂きたいと思います。

オリンピック中に生理になった体験談「元日本代表選手と医師が伝えたい正しい対処法」_img6
 

女性アスリートにとって、10代から正しい医学的知識を身につけることは非常に重要です。
産婦人科医は女性の健康の専門家ですから、女子アスリートのみなさんが大切な試合で最高のパフォーマンスを出せるように、そして引退後の人生も健やかに過ごせるように、これからもずっと応援していくつもりです。
『1252プロジェクト』、ぜひ一緒に進めて行きましょう。

<アスリートが生理にまつわる体験を語る『Talk up 1252』配信スタート>
一般社団法人スポーツを止めるなは『1252プロジェクト』として女子学生アスリートが抱える「生理×スポーツ」の課題に対し、 トップアスリートの経験や医療・教育分野の専門的・科学的根拠に基づき、 教育・情報発信を行うプログラムを推進しています。
その一環として、スポーツを止めるなYoutubeチャンネルでは『Talk up 1252』を 全10回のシリーズで配信予定。トップアスリートをゲストに、 生理とスポーツに関する対話を展開します。
様々な女子学生アスリートに通ずる悩みの一助となる動画、ぜひご覧ください。

配信URL: https://spo-tome.com/1252-top/


取材・文/村上治子
撮影/嶋田礼奈
構成/片岡千晶(編集部)


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