ライターさかいもゆるがアラフォー以上で結婚したカップルへのインタビューを通じて、結婚とは、夫婦とは何かを考える連載です。今回は、「恋は狩り」と言う肉食系の直美さんが46歳で結婚を決意するまでの経緯を伺いました。
結婚の動機は人それぞれだと思うのですが、結婚の決め手が「包容力がなくて羽毛のように軽い相手だったから」という直美さんの理由は、初めて聞いた気がします。一体、どういう真意なのでしょう。
アラサーで結婚を考えていた同棲相手に浮気されてからは、傷つくことを避けるために常に複数の男性と関係を持つようにしていた直美さん。その後、純愛映画『きみに読む物語』を観てから考えを改めたのですが、当時同棲していた恋人とは「この人と結婚はないな」と思いながらもズルズルと付き合っている状態でした。
そんな中、直美さんが以前から趣味でやっていたバンドのライブで19年前に知り合ったほかのバンドのメンバー、英二さんと再会したのは、46歳のときのこと。
直美さん:英二さんは同い年で、元アイドルだったイケメン。バンドをやっているので、ライブイベントのときに打ち上げでみんなで飲むような間柄でした。見た目はかっこいいなとは思っていたけれど、当時の私は稼ぎがいい男性にしか興味がなく、音楽スクールのインストラクターでお金がない彼のことは、全く恋愛対象外だったんです。
共通の知り合いであるライブハウスの店長に誘われたイベントで英二さんに再会したときも、何も感じなかったと言います。
久しぶりに会った英二さんに「変わらないね〜」と声をかけると、英二さんには「直美ちゃんはすごく変わったね」と言われました。
直美さん:「何が変わったの?」と聞いたら、「前は普通のOLだった。今は何かが違う」って。ちょうど、40歳を過ぎてから、社内でセクハラを告発したことで左遷されて、それまでと違う業務内容で苦労してきた経験があったんです、私。それまでの華やかな仕事と違って、研修を担当して人のために動いたりして奉仕することが多くて。今までそういうことが苦手だったのですが、仕事で揉まれてだいぶ性格が丸くなったと思います。彼はもしかしたら、そういう変化を感じてそう言ったのかもしれませんね。
その後、英二さんから飲みに誘われたときも、「これは何? もしかしてデートなの?」と訝しく思っていたそう。何度か会ううちに付き合っているような空気感になっても、普段から男性には期待しないようにしていた直美さんは自分から英二さんに連絡せずに放置。
直美さん:そしたら、彼に「もうちょっと連絡してくれても……」っていじけられました。どうやら、私のことを気に入っていたみたい。
その頃、直美さんは同棲していた恋人が異動になり、遠距離恋愛を続けていました。離れたことでさみしいとは感じず、「ひとりが快適」と思ってしまったことで、「彼と一緒に居ることに疲れちゃってたんだなあ」と気づいたタイミングだったとか。
直美さんが46歳まで独身で居た理由のひとつが、こんな風に毎回、交際相手のことを「重い」と感じていたこと。
直美さん:私は釣った魚に餌を与えないタイプなので、自分からアプローチして付き合えたら、もう興味がなくなっちゃう。そんな私に対して相手は構って欲しくて依存してくるんですが、そうするとうざいし息苦しくなって逃げたくなる。今までそういう恋愛パターンを繰り返して来ていたんです。
そんな直美さんに、英二さんは5回目のデートで「俺、直美ちゃんと結婚することにした!」と、まるで小学生のような軽いノリで言ってきたのです。
その発言に対する直美さんのリアクションは、「この人、ほんとに何も考えてないんだな〜」というものでした。
直美さん:思わず、「大丈夫?」って言っちゃいました。だけどそのときに「ちょっと待てよ」、って思ったんです。今まで恋愛でいつも上手く行かなくなってきた。ということは、自分の今までのやり方が間違っているということだから、何か行動を変えないといけない。これまでは「男性が自分より稼いでしっかりしている人がいい」と思って来たけど、その価値観が間違っている可能性があるな、と。
それならば、自分の価値観を逆張りしてみよう、と考えて、英二さんに「いいよ」と返答。
直美さん:彼の羽毛のような軽さに、「もしかしたら私には、これくらい軽い人の方が合ってるのかな」と思ったんですよね。彼はひとことで言うと包容力ゼロな男性。例えば一緒に居る女性が具合が悪くなったとき、普通の男性なら「大丈夫?」って心配したり、「ご飯買ってこようか?」って言ったりすると思うんですが、そういうのが一切ない。だから今まで付き合った女の子たちの期待に応えられず、向こうが構って欲しくて泣いたりするのがめんどくさくて別れて来たそうです。「直美さんはそういうのが一切なくて、して欲しいことははっきり言うからいいよね」と言われました。
普通の女性ならば包容力がない男性は結婚相手に避けたいところですが、元から男性に何かしてもらうことを期待しない直美さんにとっては、逆に向こうからも依存されないことが心地いいと感じたのですね。
この連載の取材をしていて感じるのは、世間一般でいう結婚相手に求める理想の条件って、意味がないなあということ。
特に人生経験が長く自分を知り尽くしているアラフォー以上ならば、自分が本当に結婚に求めている条件を突き抜けて満たす相手が居たら、その一点突破で結婚を決めるのはアリだと思います。これが、以前書いた「アラフォー以降の婚活は一点突破で決断を!」の記事の理由。
他人にうらやましがられるとか世間体など気にせず、お金でも精神的安定でもルックスでも、自分が求めるものを素直に「欲しい」と言える人が幸せを掴み取っている気がします。
長くなったので、直美さんのお話は次回に続きます。
構成/川端里恵(編集部)
Comment