安田:そういう若い子たちの日韓交流は、僕らが知っている文脈とはまったく違う流れで続いているんです。コロナ禍においても、たとえばNetflixでドラマ『愛の不時着』が大ブームを起こしたのは、偏見なしに作品をストレートに受け止めて楽しんでいる人が増えたということで、悪いことじゃないと思いますね。というか頼もしいし、うらやましい。

韓国映画の『パラサイト 半地下の家族』が日本でもそれなりに動員を招いたけれども、これまで韓国映画ファンには、韓国通を自称する人や、サブカル的な意味合いで韓国のカルチャーに深く接している人が多かったわけだけど、これらマニア層を遥かに超えて、普通に当たり前にいまの韓国の文化を受け入れる人たちが広範に生まれてきている。

韓国について、嫌韓とは違う文脈もあるんだな、と。ここにどう期待していいのか、まだ僕にはわからないけれども、それはきちんと見ておくべきではないかと思います。
 

女子高生とネトウヨのバトル

 

青木:つまり政治やメディアのレベルとか、あるいはオッサン的な心性のネトウヨ連中は韓国を罵り、しばしば居丈高にふんぞり返ったりするけれど、K-POPやファッションなどを入り口にして韓国エンタメに親しむ若年層や女性たちにはまた別の空気が流れている。それもオッサン的な心性のネトウヨを苛立たせるんでしょうね。

しかも最近はその韓国エンタメが世界中でも大人気でしょう。BTS(防弾少年団)は米ビルボード・チャートのトップを快走し、安田さんがあげた映画『パラサイト』は米アカデミー賞をはじめとする国際的な賞を総なめにした。韓国社会にもさまざまな矛盾や格差が渦巻いているけれど、余裕を失って不安感や焦燥感が蔓延する日本側には、かつて「遅れた国」ととらえていた韓国の躍進への嫉妬のようなものもあって、巷のヘイト言説の周辺にはそれが濃厚に漂っている。

 

安田:それはいまに始まったことではなくて、日韓ワールドカップのあとにNHKが「冬のソナタ」を放映し、韓流ドラマ・ブームがはじまるわけですが、初期の韓流ファンは中高齢女性が中心でした。その潮流に対する反発は、僕が取材したネトウヨにはものすごく強くありました。つまり、NHKや地上波のフジテレビが重要な時間帯に韓国ドラマを当て込むのが許せないというわけです。

その反発と差別意識が暴発したのは、2011年の反フジテレビ騒動ですよね。俳優の高岡蒼甫(現・高岡蒼佑)がフジは「韓国のTV局か」みたいな、要は韓国に乗っ取られたという意味のことをSNSに投稿して、そこにネトウヨを中心とした嫌韓層が同調した。