安田:もちろんいまもある。BTSとか、K-POPのコンサートにネトウヨが押しかけることもある。武道館とかだと、入り口あたりに日章旗を持った連中がいました。
青木:K-POPファンからすれば、そういうネトウヨ活動家はどう映るんですかね。
安田:女子高生のK-POPファンがネットで「うざい」と書いて、それに対して「オレたちをうざいと言った」とネトウヨが逆上するという一幕もありましたね。女性に何か言われると余計にムキになりますからね。
青木:「うざい」と言われて逆上って、本当にバカバカしい話だけれど、「うざい」のはそのとおりじゃないですか(笑)。
いずれにせよ、嫌韓を煽る政治やネトウヨ連中がはびこる一方、韓国のポップカルチャーに親しむ若年層や女性層が現在の日本には並存している。ともに両国の歴史への正確な知識などが薄いとしても、後者の層が今後の両国関係を新たにつなぎ直していく可能性は秘めているのかもしれません。
ただ、日韓関係の悪化を煽る政治やメディアの影響が今後、そうした文化的な潮流に悪影響を及ぼしていく可能性も否定できない。安田さんがおっしゃるように、注意深く見ていく必要はあるんでしょうね。
『この国を覆う憎悪と嘲笑の濁流の正体』
著者:青木 理、安田浩一 講談社 990円(税込)
“排他と不寛容”の風潮の背景にある時代の深層について、2人の論客が対談形式で炙り出していく。日本社会の構造的な変化、現在の政治が生み出す空気、ヘイトクライムを生む無責任と無知――。穏やかな口調で語られる“歪み”を咀嚼しながら、思索を深められる一冊。
構成/金澤英恵
著者プロフィール
青木理(あおき・おさむ)さん:ジャーナリスト、ノンフィクション作家。1966年、長野県生まれ。慶應義塾大学文学部卒業後の1990年、共同通信社入社。大阪社会部などを経て東京社会部記者。警視庁の警備・公安担当などを務める。その後、韓国・延世大学校の韓国語学堂に留学し、外信部へ。2002年から2006年までソウル特派員。2006年、共同通信社を退社し、フリーランスに。著書に『安倍三代』(朝日文庫)などがある。
安田浩一(やすだ・こういち)さん:ノンフィクションライター。1964年生まれ。静岡県出身。「週刊宝石」「サンデー毎日」記者を経て2001年よりフリーに。ヘイトスピーチの問題について警鐘を鳴らした『ネットと愛国』(講談社)で2012年、第34回講談社ノンフィクション賞を受賞。2015年、「ルポ 外国人『隷属』労働者」(「G2」vol.17)で第46回大宅壮一ノンフィクション賞雑誌部門受賞。著書に『「右翼」の戦後史』(講談社現代新書)などがある。