「もう会いたくない」我が子の気持ちを守るため
婚姻中に行われていたのはDVかつ虐待でしたが、それを証明する手立てがなく、元夫も当時から「Eさんが言うDVは全てでっちあげだ」という主張を貫き通しました。
暴力を振るうぞと脅されても、物を投げつけられても、押し倒されても、録音することさえできず、それらが実際に行われたことを証明することができませんでした。しかも当時の弁護士さんから「殺されかけるようなDVでさえ慰謝料が300万円程度」と聞いたEさんは裁判でのDVの主張と慰謝料請求を諦めたのです。
しかし証明できなかったからといって記憶から消すことはできません。
でも面会はしなくちゃいけない。だから嫌な記憶に蓋をして、我慢して交流を続けてきたのに、その結果が父親からの暴言。
「休みがあるなら友達と遊びたい」「質問責めにされて身の回りを調べられるような目に遭うのが嫌だ」「習い事の資金援助を頼んだら十分払っていると嫌味を言われたのも嫌だった」など、一度噴き出した不満は止められず、Eさんは我が子の気持ちを守るため、元夫に当分の面会の中止を告げました。
そして自らの意思を充分に主張できる年齢になった我が子とともに、再び裁判所の審判を仰ぐため面会交流の再調停を申し立てたのです。
しかし、元夫が入れ替わりに行なったのは間接強制(間接強制とは、債務を履行しない義務者に対し、一定の期間内に履行しなければその債務とは別に間接強制金を課すことで、自発的な履行を促すためのもの)の申し立て。もちろんEさん側も強制執行停止や抗告等の対抗処置を行なったものの全て通らず。所詮、間接強制金は債権扱い、面会交流の再調停がまとまるまでの約一年間、Eさんは面会交流をしない罰として間接強制金を支払う羽目に陥りました。
その額、なんと月に20万円。
子どもの「会いたくない」気持ちを守るため、Eさんは歯を食いしばって間接強制金を支払いました。なぜそんなに高額なのか。間接強制金は往々にして養育費相当額が妥当といわれていますが(もちろん養育費より高額だったり、養育費が支払われていなくても間接強制が認められたりするケースも少なくありません)。
Eさんの場合は、婚姻中から元夫の意向で子ども2人とも私立の学校に通わせていたため、その学費の半額負担分相当込みの養育費になっていたからです。しかし教育費というものは部活の費用や校外活動、塾代等にまで及ぶため、かかる費用は学費だけでは済みません。しかし元夫はEさんからのそれらの請求に全く応じないのはもちろん、子どもからのお願いも、前述の通り無下に断り続けてきました。
養育費20万円と聞けば高額と感じる人も多いかもしれませんが、Eさん宅では子どもの就学環境を変えずに守ろうとすれば、20万では学費の半分にも満たず、Eさんは同額以上の学費の負担と子ども2人の生活費、さらに間接強制金までを支払うことになったのです。
そうして面会交流の再調停で子どもの主張が通り、直接ではなく間接での面会交流が認められるまでの約1年間、月20万円に及ぶ高額の間接強制金の支払いは続いたのでした。
Eさんは「今でも子どもが『会わない』と言ったときの決心した目や結んだ口元を思い出します。強制的に会わせてしまえば、私への信頼はもちろん、社会や大人への信頼をも失いかねないことだったと思います」と当時を振り返ります。
Eさんにはたまたま間接強制金を払えるだけのお金がありました。だからこそ会わせないという選択肢が選べた。
ではもしお金がなかったら?
当事者である子どもの声さえ反映されない今の家裁の運用。このままでいいわけもありません。
前回記事「裁判所は「DVと離婚と面会交流」を関連付けては扱わない!?」
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