ひきこもる=自分の「価値」を作り出す

 

敏感なHSP気質の持ち主だった、詩人であり思想家・評論家の吉本隆明は、「そのような気質を持って生まれた人は一時期ひきこもる必要がある」と述べています(『ひきこもれ―ひとりの時間をもつということ』大和書房)。以下は彼が考えたひきこもりの利点を私なりに整理したものです。

 

①「分断されない、ひとまとまりの時間」を持つことは、将来どんな職業にも必要なものである。
②その「ひとまとまりの時間」を持つことで、人は自分の「価値」を作り出す。何かに夢中で取り組んでいるとき、「ご飯よ」という親からの呼びかけをうるさいと感じる、邪魔しないで欲しいと思う。そんな経験が価値を作る。
③「価値」とは、自分の内的な言葉を探し、見つけること。言葉には相手に伝えるための「コミュニケーション」の役割と自分の内面を豊かにするための、自分だけに響く「内臓の言葉」がある。「内臓の言葉」には何かの拍子に「この人の言葉は奥が深いな」と思わせるような力がある。
④人から「暗い」「うっとおしい」と言われることにコンプレックスは持たなくていい。社交的ではない代りに、人一倍考え、感じて、それを自分の中で膨らませることに長けていれば、それは毎日自分の価値を生んでいるということ。
⑤頭のいい人と競わなくていい。頭のいい人は自分を狭めていくところがある。職業人になるには、少し緩んでいて、いい加減なところがあっても、持続力があるというのがいい。
⑥ひきこもっているのがマイナスにならない分野、職業は必ずある。

HSP気質の人が自分に合わない仕事を選んでしまうと、とても苦しんだり、生きづらくなることが多いようです。最近では、仕事における「コミュニケーション能力」が重要視されていますが、仕事で本当に役に立つのは上っ面の会話能力ではなく、同じものを見ても、自分独自の視点や考え方を言葉にする能力。仕事に限らず、これがないと本当の意味で多くの人に認めてもらうことは難しいと思います。