勇気ある女性たちが次々と沈黙を破る『あるアスリートの告発』
2本目は性的虐待の被害にあった女性アスリートたちが声を上げた作品です。タイトルは『あるアスリートの告発』。不穏な空気が漂う事件を扱い、画面から重苦しさがひしひしと伝わってきますので、フラッシュバックが起こる可能性のある方はご注意ください。特にその怖れがない方であれば、勇気ある被害者たちが次々と沈黙を破っていく姿にきっと心を揺さぶられるはずです。多くの国際映画祭で評価を受けた作品でもあります。
スキャンダルの真相に迫っていく犯罪ドキュメンタリーとしての凄みも感じます。アメリカのローカル紙の記者たちが内部告発された事件の真相に迫る話から始まり、そこで露わになったのが数々の金メダル選出を輩出してきたアメリカの女子体操業界の腐敗体質でした。アメリカ体操連盟が守ったのはオリンピックチーム入りが期待されていたマギー・ニコルズ選手ではなく、1200万ドル(約13億円)の利益だったのです。
権力を握る著名人や団体によって隠ぺいされた性的被害の実態があぶり出されるケースが明るみになるたびに、ウンザリもしますが、この作品はそんな気持ちを見放さず、昇華させる地点まで執念深く追っています。見届けた後は、次世代のために、自分のために、行動できることがあることに気づかされていくのです。
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