FIREを目指す若者たちは若いうちはガムシャラに働いてお金を貯め、働かなくても暮らしていけるギリギリの資産額で引退を決断し、その後はコンパクトで持続可能な生活を送ろうと考えています。

 

米国はもっともチャンスに恵まれた国ですが、一方で過酷な競争社会でもあります。米国では一定のキャリアを積んでから大学院に再入学する人も多いのですが、純粋に学びたいというよりも、常にスキルアップしていかないと競争に取り残されるという面が大きいのが実状でしょう。

 

ミレニアル世代を中心に、一部の若者はこうした環境に嫌悪感を持っており、早い段階でリタイアして、その後はスローライフを送りたいと考え始めています。それを具体化したのがFIRE運動というわけです。

FIREと寝そべり族に共通しているのは、ある程度、学歴が高く、それなりにスキルを持った若者が競争を忌避しているという点です。本来であればエリートと呼ばれる人たちですが、さらに上を目指す競争があまりにも過酷であることからスローライフを目指しています。

日本でも草食系や低欲望社会など同じような動きがあるように見えますが、過酷な競争を勝ち抜いたエリートが競争を忌避しているのかというとそうではありません。これからの時代は分かりませんが、少なくとも現時点においては、偏差値の高い学校を卒業して著名企業に就職すれば、それなりに豊かで安定した生活が保障されます。著名企業に入ったエリートたちが「これ以上の競争はムリ」と叫んでいる状況とは言い難いでしょう。

その点において、米中と日本が置かれている状況は少し違っているのかもしれません。

日本における諦めの感情というのは、どちらかというと、中国の都市戸籍と農村戸籍の違いに近いように思われます。生活の絶対水準こそ日本はまだそれなりの水準ですが、正社員と非正規社員の待遇には極めて大きな違いがあり、ある種の身分格差のような状況が生じています。

低賃金で働いている非正規社員の多くは、今日、明日の生活に追われる状況ですから、草食系などと言っている余裕はありません。こうした格差の存在は、確実に社会を疲弊させ、経済にも悪影響を与えます。一連の格差を是正することは、日本にとって最優先の課題といってよいでしょう。


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