≪再びのチーム結成≫

季節が秋になった頃でした。母が自ら「車イスを使いたい」と言い、私は福祉用具について調べていました。

介護保険の利用をすれば、少ない負担でレンタルをすることができます。以前は介護の申請をして訪問看護師さんに来てもらっていましたが、毎週定期的に人がうちに来る環境に少し疲れてしまった私たちは、体調が落ち着いていたこともあり、1年を機に利用を取り下げていました。

もう1度介護の認定を受けてレンタルをするか、いっそのこと購入するか……。
迷っていた私は地域包括支援センターを通さず、一気に直接、福祉用具のお店にコンタクトを取りました。

対応してくれたのは、まだお若そうな福祉用具専門相談員のYさん。すらっとした華奢な男性で、ピシッとスーツを着ていましたが、えっさえっさと車イスを担ぎ、階段を上って運んできてくれました。

2種類の車イスをマンションの廊下で試す母。平穏な体調でしたが、肝硬変による腹水でおなかが随分と膨れています。窮屈になってしまう車イスの幅を広げられるタイプのものを紹介してもらい、試しにお借りすることにしました。

「お試しされた後はどうされますか。介護の申請をすればレンタルで利用できますが……」
こちらの事情は電話で既に話してありました。以前は介護の認定を受けていたこと、2人家族であること、母の人見知り。

あまりいろんな事を無理に勧めてくることもなく、こちらのペースに合わせて話を進めてくださるYさんの物腰の柔らかさに、母も人見知りを発揮することなく、笑顔で接していました。

車イスを借りて近所に出かけるようになった私たち。その時間はとても開放的で、このままぐんぐん、どこまでも歩いていけそうな気がしました。

「介護の申請しようか」

「そうだね」

自分の不具合を周囲に知られることを拒んでいた頃からは随分と変わって、母は再び介護の認定を受けることを、あっさりと受け入れました。


その頃、私は母の不思議な変化を感じていました。

脳梗塞の後遺症から来る痛みも、どこか忘れてしまっているような母。

以前よりも昼間に眠っていることが増え、お昼休みに私が仕事から帰っても、起こさないと気がつかない事が多くなりました。

何か達観したかのようにふんわりとした表情で、ぼんやりしている時間が増えていました。


地域包括支援センターへ連絡を取ると、程なくして職員の方が訪問に来ました。
「Aさん!」
ドアを開けるとそこには、2年近く前、母の入院中に相談に乗っていただいた職員のAさんが立っていました。

Aさんは手際よく関係各所の手配をしてくれました。そして、地域包括支援センターのAさん、福祉用具専門相談員のYさん、新しいケアマネジャーのKさんというチームが出来上がりました。

小さな我が家の、小さなこたつに全員で集合です。

私は、母が煩わしく感じるようなサービスは受けたくないということ、必要なものを取り急ぎお借りしたいということを伝えました。きちんと想いを伝え、私はこのチームの舵を取っていこうと思いました。

「車イスに乗って、暖かくなったら、ディズニーランドに行きたいね。来年の秋には、コスモスも見に行きたいね」

11月。2人で静かに暮らしていた生活の、扉をまた開けるときが来たような気がしました。

 


●最近のこと

週のまんなか水曜日、いかがお過ごしですか。

先日、品川区の戸越銀座の周辺をお散歩していたら、「文庫の森」という公園を見つけました。芝生で子ども達が遊んでいたり、池の周りで一休みする人がいたり。

 


「文庫の森」という名前は、公園にある建物が由来のようです。昔、三井の書庫だった鉄筋コンクリートの建物は大正11年に完成したのだとか。

市松模様のように互い違いに窓が配置されているのがたまりません。


それでは、良い1日を♪