薬の必要性はメリットがデメリットを上回るか否か
一方、どんな薬にも副作用のリスクがあります。薬を処方する際、「でもその薬、副作用もありますよね?」と尋ねられることがありますが、副作用リスクのない薬はありません。
例えば、日本でよく用いられるカルシウム拮抗薬と呼ばれる降圧薬には、比較的頻度の高い副作用として、足のむくみが知られています。しかし、仮に出てしまったとしても命につながるような重い副作用とはなりにくいため、副作用リスクは低いと判断することができます。
このように、薬から得られるメリットと、副作用のリスクを天秤にかけて、メリットがリスクを上回ると判断されるからこそ、高血圧のある人に降圧薬を飲むことが勧められています。
これが高血圧だけであれば、物事はシンプルなのかもしれません。高血圧は1種類の薬で治療できることもあれば、2種類や3種類の薬が必要になることもありますが、ほとんどの高血圧の場合はそれくらいで済みます。
また、最近では2種類の薬を組み合わせた合剤というのも選択肢としてありますので、それを使えば薬の種類を減らすこともできます。
しかし、年齢を重ねるごとに、持病というのは増えていくものです。高血圧だけでなく、糖尿病やコレステロールの問題と重なっていくことがあります。例えば、肥満があれば、肥満が原因となって、高血圧、糖尿病、脂質異常症の全てが重なる可能性が高くなります。
さらに、そこから数年が経過し、それらの病気によるリスクが積み重なって、心筋梗塞のような病気を発病してしまうこともあります。そうなると、治療としてはより複雑になり、高血圧や糖尿病を治療しながら、さらに心筋梗塞への治療というのも必要となってきます。そして、必要な薬というのは、たちまち6種類や7種類へと増えてしまいます。
しかし、このケースでは「7種類なんて多すぎる」とは言えないかもしれません。このようなケースでは、7種類それぞれの薬の意義が高く、全てにおいてメリットがデメリットを上回ると判断される可能性が十分あると思います。
そもそも正当な理由で、薬が7種類必要というケースは、この他にも多くあります。「そんなにたくさんの薬は必要ない」という発言の方が無責任になってしまうこともあり得るのです。
前回記事「1日40錠以上の人も!高齢者の薬が多すぎるという問題【医師・山田悠史】」はこちら>>
参考文献
1 Blood Pressure Lowering Treatment Trialists’ Collaboration, Turnbull F, Neal B, et al. Effects of different regimens to lower blood pressure on major cardiovascular events in older and younger adults: meta-analysis of randomised trials. BMJ 2008; 336: 1121–3.
写真/shutterstock
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