新型コロナについては、日々、様々なニュースが出てきて、現状がよくわからなくなっている方もいるかもしれません。アーティストの一青窈さんが、新型コロナとワクチンについて、山田悠史医師に質問しました。


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3回目のワクチン接種はしたほうがいいの?


一青窈(以下、一青) 前回、新型コロナウイルス感染症 (COVID-19)のことやそのワクチンの重要性についてお話を伺ってから半年近くが経ちました。欧米諸国に比べて新型コロナワクチンの接種開始が遅かった日本も、国民の約7割が2回目の接種を終えています(11月1日現在)。

今は国内の感染者数も劇的に減少し、緊急事態宣言も解除されて日常が戻ってきた感じがしていますが、これはやはりワクチン接種の効果なのでしょうか。

 

山田悠史(以下、山田) もちろんワクチンの効果は大きいですが、この場合は多因子で減っていると捉えるほうがおそらく的確です。まず、ワクチンにおいてはこの数カ月で接種率が急速に高まったので、これだけでも感染者が減ることは十分予測できていました。実際にその通りになったと思います。

ただ、それだけではありません。第5波によって感染者が大きく増加したことで、みなさんが外出を控え、密を避けるようになりました。感染予防もそれぞれがより慎重に行ったことでしょう。さらに、飲食店をはじめとする商業施設も時短営業等の予防対策を行っている。こういったさまざまな要因が積み重なって感染者が減ってきたと考えるのがよいと思います。

一青 それだけ落ち着いていても、厚生労働省は希望者には12月から3回目のワクチン接種を行うことを発表しています。これはどのようにお考えですか?

山田 日本はアメリカやイギリスより数カ月遅れて接種が始まっていて、2回目の接種からまだ2、3カ月という方も多いと思うんですね。しかも接種率もこれらの国を上回っています。

そのぶん、免疫の壁が強くできていて感染予防に対する効果も非常に高まっているのが今の状況だと思います。だからこの秋から年末にかけてはよい状態が続くと思うのですけれども、さらに3、4カ月経ってワクチンの効果が下がってくるとまた感染者が増えてくるということは、残念ながら十分に考えられます。実際、アメリカを含めワクチン接種を先行していた国の多くは感染者が再び増加しています。

一青 確かに日本でも第6波を心配している方がたくさんいます。山田さんがいるアメリカでは3回目の接種が始まっているようですね。

山田 アメリカでは9月にまずファイザー製の3回目の追加接種が始まり、10月にはモデルナ製とジョンソン・エンド・ジョンソン製も受けられるようになりました。

私もすでに9月の終わりに3回目の接種を終えています。アメリカの場合、現在は全員ではなく、高齢者と重症化リスク・感染リスクの高い人が対象です。私は感染リスクが高い医療従事者ということから3回目の接種を受けたかたちになります。

一青 日本では医療従事者や高齢者が優先されるものの、18歳以上であればどなたでも受けることができるようです。やはり3回目の接種をしたほうがより感染しにくくなるというような科学的根拠があるということでしょうか。

山田 数万人の臨床試験が行われた1回目、2回目の接種に比べると規模は小さいですが、3回目の接種も数千人単位の治験は行われています。

ワクチンは感染予防効果、感染しても発症を予防する効果、重症化リスクを抑える効果、命を守る効果、感染伝播を抑える効果、そして後遺症を減らす効果などと、期待される効果は非常に多岐にわたります。なかでもここで注目したいのが、感染予防効果と重症化を防ぐ効果です。

日本でもそろそろ2回接種から半年経過する方が出てきていると思いますが、今までにわかっていることをまとめると、2回目接種の半年後でも命を落とすような重症化リスクを抑える効果はかなり高いままで維持されているようなんですね。

一方で感染するリスクや、感染して発熱するような比較的軽い症状が出るリスクに対する予防効果は、半年経つとかなり落ちてきてしまうようなのです。つまり、3回目の接種は主に感染予防効果、感染しても症状を抑えてくれる効果を再び高める役割が大きく期待されていると思われます。

一青 私たちはどうしても感染者や重症者の数だけで判断してしまいがちですが、最前線で治療にあたっている山田先生から見て、ワクチンの接種によって患者さんの様子に変化は感じられますか。

山田 感染者が増えている時でも、入院する患者さんはあまり増えなくなりました。多くの方が入院せずに自宅療養で治るケースが多くなっているのではないかと思われます。

 
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