辛くても孤独とはしっかり向き合う
ふたりの子どもが大学生になったとき、前の夫と離婚を決めました。子どもたちが巣立ったあと、夫とふたりだけで生きていくのは難しい、「やっぱり相当しんどいわ」と思ったから。「心身ともに元気でいることのほうが大事やな」とずっと感じていたんです。
じつは私、45歳で離婚するまで、働いたこともなければ、お金の苦労をしたこともなかった。でも、選んだのは、ひとりで生きる人生。わずかな貯金だけで、無計画かつ能天気に新しい人生に飛び込むなんて、今から思うとあきれます。
東京の大学に通う娘のアパートに転がり込んで、「アルバイトでもすれば、なんとかなるでしょう」と悠長に話していたら、娘に「世間知らずもいいとこ。お母さん、バカね」とぴしゃりと言われて、そこで初めて現実に目覚め、青ざめてしまったという次第です。
これから先、いったいどうしようかと考えていたら、すっかり忘れていた、青春時代のアメリカ留学の夢がよみがえってきました。そこからは一切の迷いなし。その縁を手繰り寄せようと、猪突猛進です。「やってみはったら!」と自分にエールを送り、貯金でやり繰りしながら猛勉強して、47歳でニューイングランドのコネチカット州立大学のファインアート学部に入学。入寮し、2年3カ月の学生生活が始まりました。
ある日のこと、同じ寮に暮らす25歳の中国人の女子留学生が突然亡くなりました。ひどい腹痛が起きたのでキャンパス内の診療所で診てもらったようですが、英語で状況をしっかり伝えることができなかったのか、「たいしたことはない」と診断され、激痛を我慢して部屋に戻った翌日、友人が訪ねたら瀕死の状態だったそうです。すぐに病院に運ばれましたが、回復せず、そのまま息を引き取りました。
震撼しました。体中がブルブルと身震いして。同じ留学生として、「自分の意思はとことん主張しないといけない。命を落とすことにもなりかねない」。そして、自分の身は自分で守らなきゃ、自分の人生は自分でつくり出さなきゃと、体の真っ芯にビーンと響きました。
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