困ったことにマイナンバーカードの利用にはリスクも伴います。マイナンバーカードに入っているICチップは極めてセキュリティが高く、チップの内容が漏洩する可能性は限りなく低いと考えられます。しかしカードの表面には12ケタの番号をはじめ、顔写真や住所など多くの個人情報が印刷されています。自分のマイナンバーが他人に知られたからといって、すぐに悪用されるわけではありませんが、基本的にマイナンバーは他人に見せるものではありません。

米国にもマイナンバーに近い制度がありますが、付与された番号は「絶対に他人には教えない」というのが原理原則です。マイナンバーの発行は原則として1回きりですから、仮にカードを紛失しても番号変更は簡単には認められません。こうした重要情報が記載されたカードを日常的に持ち歩くのは怖いと考える人も多く、これも普及の足かせとなっているようです。

政府は国民がなかなか利用してくれないので、ポイントを付与して普及を促進しようとしているわけですが、なぜ政府はここまでカードの普及にこだわっているのでしょうか。その理由のひとつとして考えられるのが、カードの民間利用です。

「マイナポイント第2弾」に批判の嵐...それでも政府がカード普及にこだわるワケ_img0
12月13日の衆院予算委員会では、政府のマイナポイント事業について、立憲民主党・小川淳也衆院議員が「2万円もの現金を渡さなければ作ってもらえないカードって一体何なんですか?」と批判。カード普及のために政府が組んだ約1兆8000億円の補正予算に疑問を呈した。それに対し岸田文雄首相は、「マイナンバーカードは我が国の社会全体をデジタル化していくための重要なインフラ。決して無駄なものではない」と説明している。写真:つのだよしお/アフロ

マイナンバーカードは民間の事業者でも利用できる仕組みになっており、政府は民間企業に対して積極的な活用を呼びかけています。既存の各種カードと同様、店舗などで提示することでポイントを付与するといった使い方が想定されています。一部の事業者はビジネスへの活用を強く望んでいますし、景気対策にもなるという意見もあることから、政府は前向きです。

 

ただ民間への開放についても一部の論者からはリスクが高いという指摘が出ています(民間がカードを積極的に利用することになった場合、その分だけ情報漏洩のリスクが高まるのは確実です)。政府や自治体だけがこのカードを使うのであれば、それなりの仕組みを構築できますが、民間事業者の場合、組織の体制は様々ですから、どこまでセキュリティを担保できるのか微妙なところでしょう。

マイナンバーカードはあれば便利ですし、ポイントがもらえるのであればお得ですから、今回の施策をきっかけにカードを作るのもひとつの考え方です。ただ、先にも述べたようにカードには重要情報が記載されていますから、取り扱いには十分に注意してください。
 


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