大手航空会社が「LCC強化」に舵を切ったワケ...コロナで変わる旅のカタチ_img0
日本航空(JAL)は2021年6月、中国の大手LCCの子会社である「春秋航空日本」を連結子会社化。JAL傘下のLCCはジェットスター・ジャパン、ZIPAIR Tokyoと合わせて3社に。写真:Aviation Wire/アフロ

出張は移動にコストがかかるだけでなく、多くの時間も浪費します。海外の場合、時差も発生しますからなおさらでしょう。本当に重要な交渉や会議は引き続き対面で実施されますが、慣習的に行われてきた出張はコロナ後には復活しないとの指摘もあります。企業全体としても、移動をできるだけ少なくする方向性ですから、当然、航空会社の選び方も変わってくるはずです。

 

それだけではありません。働き方改革の進展によって、休暇の取得を推奨する企業が増えており、プライベート旅行の機会はむしろ拡大しています。各社はこうした変化に対応するため、LCCを拡充するという戦略を描いているわけです。

鉄道にも同じ傾向が見られます。JR東海では、コロナが終息しても、新幹線を利用するビジネス客は以前の水準には戻らないと予想しており、飲食など鉄道以外の事業を強化する方針です。

鉄道会社や航空会社は設備に多額の投資をしなければならない業種であり、安易な将来予測はできません。それにもかかわらず、どちらの業界も同じ予想を立てて準備をしているわけですから、確度は高いと考えてよいでしょう。

出張に代表される長距離移動と比較すると程度は小さいものの、短距離移動にも似たような影響が及ぶ可能性があります。

コロナ危機をきっかけに営業活動の一部を非対面にした企業は少なくありませんが、非対面への移行で営業成績が大きく落ち込んだという話はあまり聞きません。営業活動をあらためて整理すると、多くが事務的なやり取りですから、本当に会わなければならない機会はそれほど多くないと考えられます。

新規事業や複雑な提案については、引き続き対面での営業が継続すると考えられますが、非対面で済ませる業務の比率は上がっていくと予想されます。システム会社も非対面で効率良く営業できるソフトウェアを次々と開発している状況です。コロナ後には営業部門の雰囲気も大きく変わっているかもしれません。

旅行のあり方が変わると、鉄道や航空会社だけでなく、飲食店やホテル、旅館などにも影響が及びます。出張での利用者とプライベート旅行での利用者とでは、商品やサービスの選択基準がまるで違ってくるからです。旅行業界が新しいニーズをうまく取り込むことができれば、従来とは違った形で成長を実現するかもしれません。
 


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