こんにちは。編集部のミカヅキです。
京都・清水寺で書かれた2021年の「今年の漢字」は「金」でしたが、みなさんの今年の1文字はなんでしたでしょうか? 私の場合はというと「試」。いろいろと初めてのことを試す一年でした。
なかでも「KAPOK KNOT(カポックノット)」というエシカルなファッションブランドに半年間社外PRのような形で参加させてもらい、会社員人生で初の「他社」を経験。と同時に、サスティナブルな社会の実現を目指す若い人々の意識に触れて、沢山の刺激をもらいました。

インドネシア産の木の実由来のダウン、カポック。カゴの中に入っているのが、そのカポックの木の実と綿です。5ミリの薄さでダウンの暖かさを実現でき、アニマルフリー&植物性由来のエシカルなダウンとして注目されています。

ブランドを立ち上げてまだ2年目だというカポックノットですが、ブランドの存在感は唯一無二。海外のクラウドファンディングに挑戦したり、遊休不動産(使用されていない不動産)を利用して破格の賃料で銀座にショップ「The Crafted GINZA」をオープンしたり。そもそも、カポックの繊維は短く、今までは糸として利用できなかったところを、他の繊維と混ぜてシート状にする方法を開発したりと、アイデアと勢いを味方に次々とブレイクスルーを起こしているブランドです。

そして、20〜30代前半で構成された20数名のメンバーのうち、3人以外が副業メンバーという構成。さらに聞けば、異業種から期間限定で移籍中のメンバーもいるとのこと。まさに「風の時代」を体現しているかのようなブランドを前に「どう作られているんだろう……」そう思った私は思い切って聞きました。

「半年間だけ、在籍させてもらえませんか?」

カポックノットの皆さん。着ているのは、カポックの入ったアウターです。中央の男性が、創業者の深井喜翔さん。大阪の繊維メーカーの4代目です。いきなりの申し出にも関わらず、チームに快く迎え入れていただき、有り難い限りでした。

とはいえうちの会社は副業禁止なので、在籍というよりは、ミーティングに参加したり、プロジェクトに関わらせてもらったりという形でしたが、「もし副業したらこんな感じなんだろうな……」という一端を垣間見ることもできました。
私の場合は、新規プロジェクトのコンセプトワークやPR業務のお手伝いがメインでしたので、今までの職務経験を活かす内容。でも、年齢が(ぶっちぎりで)上といっても、単にその分野の経験値が高いというだけで、当然ながらアイデアやアプローチ法などは、それぞれに持ち味があり、年齢がモノを言う世界ではない。経験値の高さは他社でもそのまま通用するとは限らないことも知りました。一方で、経験値が高い分野はやはり外の世界においても「自分の得意分野」。普段は何気なくこなしている仕事でも、自分の得意分野として意識的に捉えていったほうが良い、ということにも気付かされました。

そんなプチ副業気分も味わいつつ、最も印象的だったことといえば、あるミーティングのなかでのひと言。

知り合いでもある他社のアパレルブランドのデザイナーが、カポックノットのアイテムを愛用しているという内容の取材に出てもらえるのか、という議論になった時。私も内心「そのデザイナーがカポックノットの製品を愛用していたとしても、他ブランドのサイトに出てもいいよと言ってくれるのは正直難しいかもしれないな……」とどこかで思っていたんです。でもその時、

「自分たちだけでサスティナブルな社会を実現するのは難しい、という前提があるよね。誰かに任せるんじゃなくて、世界共通の目的としてSDGsはある。だからこそ、協力しあうことが必要なんじゃないかな。きちんと伝えればやってくれると思う」

という発言があり。正直、この考え方は「土の世代」どっぷりの私には目からウロコでした。もちろん企業である限り、ビジネスでの成功は絶対的な目的ではあるけれど、もう一方で「サスティナブルな社会を実現する」という目的もあり、その両輪で回っているんだな、と。

他のメンバーも同様に「たとえ宣伝になっても、すぐに廃棄されるようなものは作らない」と言った明確な意志を持っていたり、インドネシアの現地で働いている人たちの幸福度のアンケートを取っていたり。自分たちだけ、という縦の“競争”意識ではなく、横に伸びるような“共創”の思考がしっかり根付いているんだなぁと、ウロコが何枚もポロポロと剥がれ落ちる経験でした。SDGsと聞くと、ビジネスとはまた別で、NPO的、非営利なイメージがありましたが、こんなにも自然に「働く」ことの延長線上で考えられるのだ、ということは新たな気づきとなりました。

建築家の谷尻誠さんと、料理家の谷尻直子ご夫妻のコラボレーションに一部携わらせていただいたのも素敵な思い出。スタイリッシュなデザインのアウターなのですが、カポックのダウンが入っており、アウトドアでも着られるくらい暖かさと抜群の軽さなんです。

そんな軽やかな時代の洗礼を浴びた、2021年。ともすると目の前ばかり見がちな私の狭い視野も、なるべく遠く遠く「横」に広げていきたいーーそんな想いとともに2022年も皆様に楽しんでいただける記事を作っていきたいと思っています。今年一年、ミモレの記事をご覧いただき、本当にありがとうございました。皆様からのいいね♡やコメントがいつも励みになっています。
来年もどうぞよろしくお願いいたします。