タバコが引き起こす病気は肺がんだけではない
種々の病気の原因となり、老化を加速する要因として、タバコの存在は見逃せません。
加齢に伴う変化の例として、血管の動脈硬化が挙げられますが、これはタバコで加速することがよく知られています。
タバコには、悪玉コレステロールと呼ばれるLDLコレステロールを増加する作用(参考文献1)や、インスリンの効き目を低下させ、血糖値が悪化する作用を持つ可能性(参考文献2)が指摘されています。また、交感神経の働きを高め血圧を上昇させる作用(参考文献3)も知られています。
これら、コレステロールの増加、血糖値の悪化、血圧の上昇は、いずれも動脈硬化の悪化の要因となります。
また、タバコの様々な成分が体の中に炎症を起こしうることが知られています(参考文献4)。炎症は、老化を加速する要因の一つと考えられていますが、この長く続く炎症によっても動脈硬化が加速します。ただし、こういった動脈硬化のプロセスは、禁煙によって部分的にでも回復することも知られています(参考文献5)。
このように、喫煙によって臓器の老化が促進されることで、様々な病気につながります。
肺がんは、よく知られた喫煙が原因となる病気の一つですが、タバコが引き起こす病気は肺がんに限られたものではありません。
それ以外にも、心筋梗塞や脳梗塞といった血管の病気(参考文献6)、多くの種類のがん(参考文献7)、肺気腫と呼ばれる肺の病気(参考文献8)、糖尿病(参考文献9)、骨粗鬆症(参考文献10)、不妊(参考文献11)、白内障(参考文献12)と多くの臓器にわたって病気と関連することが知られています。
また、早く禁煙すればするほど、このような病気のリスクを下げられることがよくわかっており、早い段階で禁煙すれば、年月をかけながら、そのリスクは非喫煙者と同じレベルまで低下させられる可能性があることも知られています(参考文献13)。
禁煙の血管に対する効果を調べた研究では、禁煙に成功した人は平均体重が5キロ増加したにもかかわらず血管の機能が回復し、ひいては心臓や命を守ることに繋がったと報告しています(参考文献5)。体重増加によるマイナスよりも、禁煙のプラスの効果が勝ったのです。
このように、喫煙には老化や様々な病気を招くリスクが、そして禁煙にはそれを巻き戻してくれる効果が、わかっています。
前回記事「高齢者の「歩けない」理由は一つじゃない。肺や目の機能低下も一因に」はこちら>>
参考文献
1 Craig WY, Palomaki GE, Haddow JE. Cigarette smoking and serum lipid and lipoprotein concentrations: an analysis of published data. BMJ 1989; 298: 784–8.
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3 Cryer PE, Haymond MW, Santiago J V., Shah SD. Norepinephrine and epinephrine release and adrenergic mediation of smoking-associated hemodynamic and metabolic events. N Engl J Med 1976; 295: 573–7.
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13 Rigotti NA. Clinical practice. Treatment of tobacco use and dependence. N Engl J Med 2002; 346: 506–12.
写真/shutterstock
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