超高齢社会を生きる私たちが望むのは、ただ長生きするのではなく、“死ぬまで元気”でいること。なるべく人の手を借りず、最期まで自立した生活を送りたい。そのために、今すぐできることは何か。NY在住の老年医学専門医、山田悠史先生の新刊『最高の老後 「死ぬまで元気」を実現する5つのM』(6月24日発売)から、その答えをひとつご紹介します。

「病気になりにくい食生活」とされるものの多くは、「病気のリスクとの関連性」が判断の目安とされています。

ここでいう「関連性」は、地中海式ダイエットなどの一部の例外を除いては因果関係を示すものではなく、本当に「それを食べたから病気になりにくいのか」までははっきりとわかっていない、ということになります。

それでも最良の判断でそのように推奨されており、現時点での最善の選択肢と考えられているわけですが、今後それが覆る可能性を含んでいるという点に注意が必要です。
 

食品と健康の因果関係を示すのは難しい


こうした背景は個々の食品にも当てはまります。特定の食品について、「〇〇は体によい」「◯◯は△△に効く」などと大々的に宣伝されていることがありますが、このように言い切る宣伝の場合には、多かれ少なかれ嘘が混じっていると考えた方がよいでしょう。

食品と健康との因果関係を明らかにするのは、それほど難しいことだからです。では、こういった宣伝は何を根拠にしているのでしょうか。

 

一つは、栄養成分などに基づく「机上の空論」です。例えば、「この食品にはビタミンCが多く含まれるので、抗酸化作用がある。だから健康によい」といったものです。

 

一見、問題はなさそうですが、実際にはビタミンCをどれだけ摂ればどのようなことに効果があるのかあまりわかっておらず、「抗酸化作用」というものがいったいどのように体を守ってくれるのかも必ずしも明らかではありません。しかし、人をなんとなく信じ込ませるには十分な表現となってしまいます。

あるいは、「経験談」が根拠になることもあります。「あの有名人がやっているダイエット法」「□□さんが△△を食べるようになって風邪をひかなくなった」「〇〇を食べるようになってから体の調子がよくなった」といったものです。

もちろん真実なのかもしれませんし、因果関係があるのかもしれません。ただ、残念ながらほとんどはタイミングの問題であり、偶然効果が感じられた可能性が高いといえます。

「〇〇を食べるようになってから体の調子がよくなった」というのは、〇〇を食べるようになった「後に」体の調子がよくなったという時系列を示すだけで、〇〇を食べた「から」よくなったという因果関係を保証するものではありません。

そこには偶然性や他の要因も貢献している可能性が高く、実際には因果関係は示せないことが多いのです。

 
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