断食にも副作用のリスクがある


ただし、断食はダイエットには有効かもしれません。カロリーを摂っていないわけですから。これまでの研究結果が一貫しているわけではありませんが、ダイエットの手法として、肥満のある人が1日の中で時間を決めて断食し、それ以外の時間で食事をするという方法が肥満を改善したと示す研究結果があります(参考文献3)

これは肥満の改善法として有効な可能性を示したものだとは思いますが、それが老化を遅くした、長寿につながったということを示すにはいたっておらず、肥満を改善することとそれに関連した変化を除いては、健康にどのようにつながるのかまではわかりません。

断食ダイエットが健康にいいって本当?効果と副作用、両面の正しい理解を_img0
 

また、物事は必ず両面を見ることが大切です。断食にも「副作用」のリスクがあります。行き過ぎた断食は、低栄養やリフィーディング症候群と呼ばれる時に致死的な副作用を招く恐れがあります。

 

リフィーディング症候群とは、一定期間の断食の後に、突然十分量の栄養が体の中に入った結果起こる電解質(ミネラルバランス)の異常です。栄養が十分に与えられていなかった体に一度に栄養が入ることで、インスリンがたくさん放出され、体に入ってきた糖分とともにカリウムやリンといった電解質が細胞の中に取り込まれて、たちまち血液中の電解質が低下してしまい、致死的な不整脈などの合併症につながることがあります(参考文献4)

これは、数日の断食や低栄養状態で起こる可能性のある合併症で、入院中の患者さんでもしばしば問題になります。こうした状況では、食事の再開時に必要なビタミンや電解質をしっかり補い、血液検査で頻繁に確認しながら、少しずつ摂取カロリーを増やすといった対応を行います。そうでなければ、命を落とすリスクがあるからです。

このように、誤った断食には健康へのリスクがあると知っておくことも大切です。
 


前回記事「不健康な食べ物が健康を支えることも。「健康によい食事」は時と場合で変わる【医師・山田悠史】」はこちら>>


山田悠史先生のポッドキャスト
「医者のいらないラジオ」


山田先生がNYから音声で健康情報をお届けする番組をスタート!
以下の各種プラットフォームで配信中(無料)です。
進行を担当するのは、ミモレが属する部署のウスイ部長。
ぜひ聞いてみてくださいね。

Spotify
Google Podcasts
Apple Podcasts
Anchor
Voicy

リクエスト募集中!

ポッドキャストで話してほしいテーマ、先生への質問を募集しています。
番組へのご感想や先生へのメッセージもお待ちしております。
以下の「応募する」ボタンから気軽にご応募くださいね!

応募する

 


参考文献
1    Heilbronn LK, Ravussin E. Calorie restriction and aging: review of the literature and implications for studies in humans. Am J Clin Nutr 2003; 78: 361–9.
2    Redman LM, Ravussin E. Caloric restriction in humans: impact on physiological, psychological, and behavioral outcomes. Antioxid Redox Signal 2011; 14: 275–87.
3    Stockman MC, Thomas D, Burke J, Apovian CM. Intermittent Fasting: Is the Wait Worth the Weight? Curr Obes Rep 2018; 7: 172–85.
4    Mehanna HM, Moledina J, Travis J. Refeeding syndrome: what it is, and how to prevent and treat it. BMJ 2008; 336: 1495–8.


 

構成/中川明紀
写真/shutterstock

 
  • 1
  • 2