前回の記事で紹介したように、コロナと息子さんの転職をきっかけに、20年近く住んだ鎌倉から長野県飯田市に移住したクッキーアーティストのMioさん。もともと1つの土地に固執するタイプではなかったそうですが、移住から1年半が経った今、新たな地でやりたいことを次々と見つけ、水を得た魚のように生き生きと暮らしています。

移住したばかりの頃のMioさん。「田舎暮らしを始めていろいろなことを考える。頭がクリアになるというか、今まで止まっていた時間がブワァーっと動き出す感覚。ワクワクしかない」とインスタに綴っていました。


こっちに来て生きることが楽になった


「以前から私のことを知っている人たちには、あなたは都会でしか生きていけないタイプだから、きっと1ヶ月で泣いて帰ってくるって言われていたんです。でもこうして普通に馴染むことができて、別人になったねと。こっちに来て、生きることがすごく楽になったんですよね。180度変わって、昔の私大変だったなって最近よく思います(笑)。

移住当初は地元の人に紹介してもらったカフェで働いていましたが、好きな時だけ自分のお菓子を販売する出店スタイルに変えてもらったんです。移住前は働きすぎで、非人間的な生活をしていたので、田舎に行ってまでそういう暮らしをしたくなくて。同じような仕事の仕方は違うなと、半年もせずに通常の勤務形態を辞めさせてもらいました」

2018年にはレシピブック『Mio's Happy Icing Cookies』も発売しているMioさん。

今までやれなかったことをやるために移住したのに、以前のようにお菓子だけ作っていても……と思ったMioさん。鎌倉にいた頃は、仕事と日々の生活に追われて疲弊して、「考える脳がなくなっていた」と話します。今は仕事の量を減らしたことで、愛犬と一緒に自然の中で過ごす時間が生まれ、自分と対話する時間が増えました。

自然の中で過ごすだけでなく、移住してやりたかったことの1つが陶芸です。定期的に陶芸教室に通い、カフェで出す食器はそのうちすべて自分で作ろうと思っているのだとか。他にも、いろいろな人に会うことが、新たな何かにつながると確信しています。

「“移住をする上で何が必要ですか?”と聞かれることが最近増えましたが、私は決まって“コミュニケーション力”と答えています。行政もいろいろやってはくれますが、結局は自分で掴みにいかないと何も始まらないかなと。人脈がないとお金があっても家を貸してくれなかったり、何かをやろうと思っても広がらないので、田舎で何が大事かって、人脈だと思います」

気候の良い秋口は、朝ごはんやランチは近くの森で。


南信州は食材の宝庫


他に移住してから感じることは? と尋ねると、こんな答えが。

「飯田に来てから、正直美味しいものしか食べていません(笑)。しかも野菜やフルーツ、お米は頂き物や物々交換で賄えるので本当に助かっています。あとはお肉が安くて、美味しいし新鮮なんですよ。私はホルモンが苦手で、東京ではどんな店でも食べられなかったのに、飯田に来てから食べられるようになりました。飯田って焼肉の街なんですね。人口1万人あたりの焼き肉店の数が日本一みたいで、家でもやるし羊も食べるし。

ある料理研究家の方が、以前“南信州は食材の宝庫”とおっしゃっていましたが、本当にそう思います。手に入らないような食材がたくさんあって、産直市場には見たことがないキノコや野菜、フルーツが売られているんですよね。通っている陶芸教室には地元のおばあちゃんたちがたくさんいるので、そこで食べ方を聞いたり作ってきてもらったり。去年は味噌工場を借りて、若い子たちも一緒にみんなで味噌を作ったんです。飯田には20代の子たちも結構いて、意外と長野から出ないんですよね。地元の子たちと関わると、そういうことができて面白いですよね」

近所でひつじのショーンさながらの可愛い羊たちを発見して毎日写真を撮り続けていたら、地元の人に“それ一番美味しい羊だね”と言われてすごくショックだったそう(笑)。
 
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