コスメに映画、ドラマ、飲食店……誰もが評価をつけ、レビュアーになれる時代。レビューが上手いと、特定のジャンルの商品やサービスの紹介を中心に書く専門ライターとして活躍する道や、レビューブロガーとしてアフィリエイトや広告で収入を得る道も広がります。今回から数回にわたって、ファンがつくレビューの書き方のコツと注意すべきポイントについて解説していきます。
プロも愛用、リピーター続出! 見てないことは書かない
ファンがつくレビューの書き方を解説する前に、私が新人時代に先輩に怒られた、忘れがたいエピソードからお話ししたいと思います。
美容雑誌『VOCE』の編集部に異動して1年目のころ、美容ジャーナリストとしても活躍する先輩編集者から原稿の書き方や取材の仕方を教わっていました。私があるアイメイクの記事で「ヘアメイクさんにも愛用者の多いアイライナー」と書いたところ、その先輩から「見たんかい!」と原稿を突っ返されたのです。「どのヘアメイクさんが使っていたのか、全員の名前を言え」と凄まれて、びっくりしたのと、嘘を見ぬかれた恥ずかしさに言葉を詰まらせました。
そのアイライナー(確か資生堂のINOUI ID<インウィ アイディー>だったと記憶しているのですが)、「名品って言われてる気がするし、プロもみんな好きっしょ!」と浅い知識で、実際に誰が使っているか確かめもせずに書いたことのは指摘の通りです。
コスメ紹介の原稿に書き慣れてなかった私は、雑誌のバックナンバーを読んで、言い回しを真似していました。「プロも愛用」のほかに「リピーター続出」「他に類を見ない」などなど……コスメを褒めるそれっぽい言葉をあちこちから引っ張ってきて、つなぎ合わせて使っていたんですね。
「勉強して真似するのはダメじゃない。でも、よく使われる言い回しに逃げるクセをつけちゃダメ」
と言われました。それっぽい言い回し=常套句を使わずに表現しようとすると、ものすごく真剣に表現する対象の商品と向き合わなくてはなりません。「このアイライナーの一番いいところはなんだろう?」と真剣に考えた先に、オリジナリティのある紹介の仕方が出てきます。
WEB発信がメインになった今実感するのは、オリジナリティのある紹介こそが発信力であり、印象に残りやすい。積み重ねていくとあなたのレビューのファンを生みます。
これはコスメに限らず、映画やドラマでも、小説でも、レストランやホテルのレビューでも同じことが言えそうです。「号泣必至」「珠玉の名作」「圧巻のラスト」など……ありがちな褒め言葉でごまかさず、こなれてなくてもいいから頑張って捻り出して“自分の言葉で褒める”クセをつける努力は、決して無駄になりません。
小さな嘘を許すと、やがて大きな嘘になる
先輩に教わった大事なことには、「常套句に逃げない」の他にもう一つ「小さな嘘をつかない」という指摘も含まれていました。誰が使っているか見てもいないのに、「愛用者も多い」と書いてしまうことは、事実か定かでないことをさも事実かのように書いてしまっている重罪です。
でもこのぐらいいいだろう、業界でよく使う言い回しだからいいだろう、多少“盛って”もいいだろう……そうやって「小さな嘘を自分の中で許しているうちに、やがて大きな嘘をなんの良心の呵責もなく書いてしまうようになる」とその先輩は言いました。
“全米は泣かない”し、“長蛇の列”は実際に見た時にだけ書け。アイライナー1本からジャーナリズムの矜持の話へ。越えてはいけない一線は、そんな小さな“いいだろう”から越えてしまうのかもしれないと胸に刻みました。
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