ファッションモデルという仕事柄、その美しさやお洒落さに注目が集まることの多い富岡さんだけれど、その大らかな子育て哲学もかなり説得力があって魅力的だ。
「私は子どもが幼児期、とくに3歳までの期間というのは愛情を注ぐ時期だと思っています。叱ることなど何もなく、何か起きても、悪いのはすべて大人の方だと思うから。なぜなら子どもは好奇心旺盛なもので、教えてもらわなければ何も分からないし、間違ったり失敗したりしても、当たり前ですよね。
昔、娘がまだ幼かった頃にこういうことがありました。初めて傘をプレゼントしたら、娘はもちろん大はしゃぎ。ところが、少し目を離した隙に、娘がその傘を裏返し、『ママ、お船だよ♪』って(笑)。一瞬ええ~っ!と思いましたが、傘の使い方を教えなかった自分が悪いわけだから、頭ごなしには叱りませんでした。その後、曲がった傘をさしながら楽しそうに遊んでいる娘を見て、子どもって、壊れた傘を不格好だと思う大人の価値観とは全く違う見方をしているものなんだ、と気付かされました。それと同時に叱らずにいたことにより、雨の日がネガティブな印象にならなかったことに安堵したことを覚えています」
幼稚園に上がる頃からは、子どもが少しずつ社会性を身につけていくのと同時に、自発的に行動することの大切さを教え始めた。
シールで楽しみながら
子どもの達成感を養う
「私は娘に『~しなさい』、『~してはダメ』と頭ごなしに叱ったことがないんです。たとえば、うがいや手洗いを習慣にしてもらおうとした時には、手書きで作成したカレンダーのような表とシールを用意。そして、うがいや手洗いが終わったら、その表にシールを貼る、というルールを作ってみたんです。子どもはシールを貼るのが好きですから、日々の決まり事が楽しい遊びに変わるようひと工夫してみたんですね。するとこれが大成功。もし、うがいや手洗いをしていなかったら、『今日はシール貼ったの?貼らなくていいの?』と聞くことができる。それならうがいや手洗いをしなさいと直接言わなくても済みますよね。するとだいたい娘は、はっと気が付いて『貼る~!』って(笑)。
小学校1年生になり宿題が出るようになった頃にもこの手を使い続け、やるべき宿題を書き出しました。ここでのポイントはその宿題が早く済んでしまい、時間に余裕があるとつい親の都合で「これもやっておかない?」という具合に追加したくなるところですが、そこはぐっと我慢。決めたことができたらよし!とする。あくまでも目的は達成感を得るためだということを忘れないようにすることが大切です。
さらに小学校3、4年生になったらシール表からホワイトボードにグレードアップ。自分でやるべきことを書き込めるようにしていったんです。その甲斐あって、3年生の時には率先して宿題を終わらせるようになっていました。でも、子どもには必ず面倒になり途中で投げ出す時が来るんですよね。そのために過去のシール表をすべて保存しておいたんです。途中で投げ出したら、溜めたシール表を見せる。『こんなに頑張ったんだね』って。すると子どもはまた頑張ろうと思うんです。
シール作戦はこうして日々、小さな『達成感』を積み重ねていくことの気持ちよさを味わってもらうのが狙いでした。それが次のやる気や行動力に繋がるからです。結局、大人になってもTo do listをこなしていく毎日でしょう? それをいかに嫌々ではなく、自主性を持って前向きに取り組んでいけるようになるか。そういう姿勢を子どものうちから身に付けていくことが必要だと思うんですね」
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