多様性の大切さが言われるようになって随分経ちます。では多様性とは一体何なのか? と問われてみると、正直なところ、よく分からなくなっている人も多いのではないでしょうか。おそらくその一番の重要性は「違いを尊重する」というところにあると思うのですが、さらに突き詰め始めると「社会の秩序よりも“違い”を優先すべきか?」とか、「『差別だ』という一言のもと言論の自由を奪っていかないか?」という議論にもなってくる、と思うからです。

『クィア・アイ IN JAPAN!』Netflix公式ホームページより


多様化において先進的とされるアメリカの、ポジティブな側面とネガティブな側面
 

「多様性」という価値観がかなり浸透し、もう一歩先に進むべきときにきていると思われる今。あらためて多様性とは何か、そしてどのような多様化社会を作っていくべきなのか、ということを考えるうえで、是非見てもらいたいNetflixの作品があります。それは『クィア・アイ IN JAPAN!』シリーズと、『世界の今をダイジェスト』シリーズの中の「政治的公平さ」、「人種による貧富の差」の2つ。これらの作品は、多様化において先進的であると言われるアメリカの、ポジティブな側面とネガティブな側面を分かりやすく教えてくれていると思うからです。

できれば最初に見てほしいのが、『世界の今をダイジェスト』の中の「人種による貧富の差」。そこでは、多様性のない社会がどのような弊害を生むのか、その仕組みが分かりやすく解説されています。たとえばアメリカでは、黒人が住むエリアと白人が住むエリアがハッキリと分かれています。白人エリアに黒人が家を買いたいと思っても、それはとてつもなくハードルが高い。するとどうなるかというと、白人エリアは治安なども良く人気となっていき、家の価値が向上します。そこに家を買った白人は、買った当時よりも高い価格でその家を売り、さらに良いエリアに移り住み……と、自身の富を増やしていけるのです。これが、貧富の差を生む構造です。

 


貧富の差を生む社会的構造とは?
 

こういった歴史の積み重ねの結果、多くの黒人たちはお金がないから教育を受けられなかったり、あるいは何とか大学を出て良い職につけたとしても、親兄弟など親族が貧しいから面倒を見なければならなかったり……と、連鎖は続きます。つまり多様性のなさが、これほどまでに巨大な不平等を生んでいるというわけです。

このことからも分かるように、非・多様化社会の最大の問題は差別を生むことであり、その差別が様々な不平等、不利益を生むことにあると思います。ならばやはり全ての人を公平に扱う多様化社会にすべきだ! と思うかもしれませんが、事はそうシンプルではありません。そう感じたのが、同じ『世界の今をダイジェスト』シリーズの「政治的公平さ」を見たときです。