さまざまなトレンドを生み出しているYouTube業界。そのなかでも、とくに話題を集めているのが、『THE FIRST TAKE』(読み:ザ・ファーストテイク)です。同チャンネルは、実力派のアーティストが、一発撮りのパフォーマンスを行なうもの。用意されているのは、白いスタジオに置かれた一本のマイクのみ。演出を削ぎ落としたなかで、アーティストが“音楽”に向き合う姿が映し出されます。

現在、590万人超えの登録者数を誇る同チャンネル。なぜ、ここまで熱狂を呼んでいるのでしょうか。本稿では、その理由を考えていきたいと思います。


私たちは、完成形にたどり着くまでの“ストーリー”に惹かれる?


近年、NiziUを輩出した『Nizi Project』や、JO1、INIの『PRODUCE 101 JAPAN』などオーディション番組が大きな話題を集めていますよね。ステージの上でキラキラと輝くスター候補生が、影で血の滲むような努力をしている姿を見た時。私たちは、グッと惹き込まれるのです。

 

『THE FIRST TAKE』が熱狂を呼ぶ理由も、これに通ずるものがあるのではないでしょうか。

白いスタジオに置かれた一本のマイク。ここでのルールは、ただ一つ。一発撮りのパフォーマンスをすること……というシンプルなつくりだからこそ、より緊張感が伝わってきます。洋服が擦れる音まで拾う高性能なマイクロフォンと、スタジオの神聖な雰囲気に、観ているこちらまでドキドキ。

本人たちも、「緊張する……」と言いながらウォーミングアップをしたり、水を飲んだり。歌手のLiSAさんが「紅蓮華」のパフォーマンス前に、「なんか、すごい色んなことが今年あったじゃないですか?」と語っているシーンも、ノーカットで収録されています。

LiSA - 紅蓮華 / THE FIRST TAKE


KANA-BOONの谷口鮪さんと、ネクライトーキーのもっささんがコラボした回では、歌詞を間違えてしまう場面も。一発撮りだからこそのハプニングも、『THE FIRST TAKE』の面白さなのです。

KANA-BOON(谷口鮪)× ネクライトーキー(もっさ) - ないものねだり / THE FIRST TAKE


『THE FIRST TAKE』には、ミニドキュメンタリー的な要素があるんですよね。ただ歌っている姿がアップされているだけなら、「上手いなぁ」で終わってしまうかもしれません。しかし、堂々と一発撮りに挑んでいるように見えるアーティストも、直前までプレッシャーに押しつぶされそうになっている。完璧なパフォーマンスにたどり着くまでのストーリーを知るからこそ、より感情移入できるのです。

 
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