ナチス・ドイツと「相模原障害者施設殺傷事件」の共通点


浅田:優生思想が「国家のために」「社会のために」という観点で言われ始めると危ないというのは、ナチスが支持を集めた過程を踏まえたものです。

 

アツミ:「ユダヤ人は国家の役に立たないからいらない」と国が言い出した結果、大量虐殺が正しいことのように実行されてしまった、ということでしょうか。

浅田:実はユダヤ人の前に「T4計画」という障がい者の大量虐殺があったんです。そのベースには「障がい者は経済的に役に立たない。不幸で、家族も苦労している=生きる価値がない」という社会の決めつけがあり、ナチスはそれを最大限に利用したんですね。私がナチス・ドイツによる「T4計画」についての番組を作った翌年に起こったのが「相模原障害者施設殺傷事件」の事件です。犯人、植松死刑囚がまったく同じことを言っていて、これは地続きにある問題だと感じました。

「相模原障害者施設殺傷事件」とは
2016年7月26日に相模原市にある障害者施設「津久井やまゆり園」に男が侵入し、入所者19人を殺害、26人に重軽傷を負わせた大量殺傷事件。施設職員だった植松聖死刑囚(事件当時26歳)は、犯行動機について「意思疎通のとれない障害者は安楽死させるべきだ」「重度・重複障害者を養うには莫大なお金と時間が奪われる」などの自説を展開し、犯行を正当化していた。