偏った思想に親が傾倒していたら。どう伝える?
アツミ:ただ難しいのは、こういう発言を「実は支持している人」がいることですよね。
浅田:(前回の話にも出ましたが)「うちなる優生思想」によって間違った安心感を得て、それが一方的な“正義”に繋がってしまう人がいるからだと思います。
アツミ:それこそ杉田水脈議員の生産性の話だって、こんな言い分を支持する人が? と思っていたんですが……。男性だけでなく、女性にも「せっかく子供が産めるんだから」という素朴な考えと同じようなものとして、あの発言をとらえている人もいたり。話し始めると言い争いになっちゃったりして。
バタ:ありますよねえ。
アツミ:この間も、有名人のこの手の発言に、友人がSNSで「その通り!」と賛同していたんです。「それは違うんじゃないの?」と言ったら、相手がすごく感情的に絡んできて。久しぶりに会った年老いた親が「ネトウヨ」になっていたっていう話も、最近よく聞くので。
浅田:肉親だと困りますよね、「間違ってる」と言っても聞いてくれないし……。相手の言い分を聞いた上で、「こういう意見もあるよ」ときちんと反論することかなと思います。2017年にトランプ大統領が就任したアメリカで、取材中にそういう場面に出くわしたことがあります。私が取材していたのは女性に対して差別的な発言や施策を打ち出すトランプ氏に抗議する「ウイメンズ・マーチ」という抗議デモに参加していた40代女性だったんですが、彼女の母親がトランプ支持者で、意見が大きく食い違っていたんです。彼女は「たとえ母と決裂しても私は言う。それが次世代への責任。放置すれば私の子供の未来がなくなる」と言っていました。ただ論破しようというのではなく、母親の意見は意見として聞きながら、親子とはいえ一定の距離を取って付き合っていたようです。
バタ:「波風立てないように……」と思って口をつぐんだり、諦めて放置したりしちゃいけないんですね。
浅田:みんなが同じ意見にはならないから、「優生思想」に近い考えや差別的な考えの人もいなくなりはしません。でも諦めないこと。空気読め、と煙たがられても。SNSでも同じで、理不尽な言説には「それは違う」と表明する態度は必要かなと思います。「自分と同じ思いの人もいる」とエンパワーメントされる人もいるはずだし。そして、自分と違う意見に必要以上に傷つかないこと。
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