日本の大手電力会社は、今年に入って連続して電気料金の値上げを発表しています。これは、ウクライナへのロシア侵攻による欧州エネルギー危機も大きく影響しています。日本のエネルギー自給率は11%とほかの先進国に比べてかなり低く、海外から輸入する石油・石炭・天然ガス(LNG)など化石燃料に大きく依存しているためです。
さらに6月から続く記録的な猛暑日と節電要請により、家計への影響や企業の経営状態悪化も心配されます。

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社会派ライターの渥美志保とバタやんこと川端里恵の“アツバタ”コンビが、今気になるニュースなキーワードの背景を探り、学んでいく連載「知りたい!気になるニュースなことば」第2弾は、注目を集めるキーワード「再生可能エネルギー」と脱炭素を目指す「カーボンニュートラル」を深掘り! 再エネ運用プラットフォームのベンチャー企業を立ち上げた堀ナナさんに「原発再稼働すべき?」「日本の再エネ化が進まない理由は?」「カーボンニュートラルは実現できるの?」などの素朴なギモンをぶつけてみました。

 


電力の“作りおき”ってできないんですか?


川端里恵(以下、バタ):今年は、6月の異例の猛暑日が続く前から「節電要請」が出ましたね。そもそも電力って、使っても使わなくてもたっぷり発電しておいて、足りないときに使おうってことはできないんですか?

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堀ナナさん(以下、堀):電力って「同時同量」と言われていて、つまり「発電する量」と「消費する量」が、同じ時刻に同じ量になっていないといけないんです。これが一致しないと周波数が乱れてしまい、発電所のほうで安全装置が働いて動かなくなっちゃうんですね。

堀ナナさん映画プロモーターからキャリアチェンジして、 2011年に戦略系コンサルとして再生可能エネルギー業界へ。2016年に再エネファイナンス、再エネ発電事業者としてスピンアウト。事業開発チームをリードし、累計300億円の太陽光発電プロジェクトの組成、開発、建設に従事。代表を務める「Tensor Energy」は、「スタートアップ企業の甲子園」と呼ばれる「IVS LAUNCHPAD」で、2022年のファイナリストに。

渥美志保(以下、アツミ):安全装置が動いちゃうとは、つまり停電とかが起こっちゃうと?

堀:そうです。「使う側」が多くても「作る側」が多くても停電が起こってしまいます。ですから発電業者は、その時その時の季節や気象状況などから消費量を予測し、そこから作った「発電計画」に沿って、需給のバランスをとりながら発電しているんです。これを「バランシング」っていうんですね。

バタ:発電所って常にフルパワーで発電してるのかと思ってました。

堀:最近では蓄電池の開発や法整備も進んでいますが、基本的に電気はためてはおけないので、その都度その都度、使う分だけを予測して発電しているんです。

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アツミ:6月末の節電要請は「もうこれ以上、日本には発電の余力がない」って意味じゃなく、「予想よりも暑くなっちゃって、計画通りの発電量じゃ足りなくなってしまった」ってことですか?

堀:そうですね、「予想よりも早く暑くなっちゃって、予定していた発電所の稼働では間に合わなくなってしまった」という感じです。毎年暑さと電力需要のピークは8月ごろに来るのですが、それに近い状況が2ヵ月早く来たので間に合わなかったんですね。3月に東北で地震があって火力発電所が止まっているのもあります。止まっている原発を動かしたら解決という簡単な話でもないです。原発は底上げすることはできるけど、調節は難しいので。ちなみに電気にも、売買される卸売り市場があるの知ってますか?

バタ:え、あの、豊洲市場的な?