親友の不在を受け入れられない主人公が行きつく先は『やがて海へと届く』
親友であり、憧れの人でもあった独特な魅力を持つ友人、すみれ(浜辺美波)がいなくなってから数年。岸井は彼女の不在を受け入れられず、彼女を死んだものとして扱う周りの人たちに怒りを感じる主人公・真奈を演じています。
まず、二人が出会う大学での新歓から社会人となった現在まで、いくつかの時間軸を演じているのですが、大学生になりたての真奈のもっさりした感じと数年後の垢ぬけてきたところ、ある程度自分に似合うものがわかってきた社会人になってからの見た目の差がはっきりしています。顔は同じなんだけどパッと見の印象が全然違っていて、演じ分けがすごいなと思いました。
また、回想しつつもういないすみれのことを想って生きるという表現が難しい役だったと思うが、自然に真奈の気持ちに寄り添い、真奈の一部になったような気持ちで観ることができました。「私たちには、世界の片面しか見えてないと思う」というセリフの通り、見えてくるもう一つの面も印象的な作品だ。
さまざまな経験や人との対話を経て、真奈がたどり着いた行動。独特の感動がせまってくるラストで、そこまで泣かなかったのに思わず涙してしまいました。試写会で一度観たのですが、あの感動を映画館で味わいたくて、あらためて観に行こうと思っています。少しでも気になっている方は、ぜひ劇場であのラストを見届けていただきたいです。
唇の表現が印象的
彼女の主演作を振り返ってあらためて感じたのは、目だけでなく口の表情も気になる俳優さんだということ。何か言おうとして言いよどんだ瞬間、驚いて口が空いた表情、勇気を出して気持ちを言葉にするとき、怒って強い言葉を発するとき……彼女が何か言うのか、言わないのか、言うとしたらどんな言葉を口にするのか、すごく気になります。
さまざまな印象・さまざまな性格の役を自在に演じ分ける彼女が、これからどんな役を演じていくのか、とても楽しみです。
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