あえて「表と裏」に描かない妻の違う顔


まずは、西島さん演じる家福の妻、音(おと)。これがまた、ミステリアスな役柄でしたねー。基本はロングヘアのゆるウェーブで、それほど大きなアレンジはないのですが、セクシャルなシーンでは、ちょっと巻きが強めに入っていて、病院のシーンはストレート感が強調されていたなーという印象。

 


こういうキャラを描くときって、「真夜中は別の顔」みたいな感じで、服装や髪型まで変えちゃう演出もありえると思うのですが、音の場合、日常の延長線上に違う顔の自分がいるという感じなんでしょうね。
決して、アンビバレンツなのではなく、二重人格でもなく。裏と表ですらなく、シームレスにつながっているんだろうなあという感覚です。ちょっとメビウスの輪を想起するような役だった。

 


「ひとつ結びがおしゃれに見えない人」側の人、みさき


一方の、寡黙なドライバー、みさきは、必殺仕事人的な硬質な髪型。
最近、私、「ひとつ結びがおしゃれに見える人、そうじゃない人」みたいな記事を書きまして、ぷちバズったりしたのですがそれでいうと、「ひとつ結びがおしゃれに見えない人」側の要素を完全に網羅した髪型でした。
具体的に言うと、ひっつめ感だったり、高さだったり、後頭部のぺたんこ感だったり、ゴムで結んだだけの処理なしだったり。

 

ただ、愛想もそっけもないひとつ結びなのだけれど、個人的には顔まわりに残ったサイドバングの長さが絶妙だなあと思って見ていました。あの毛があると、ひとつ結びにしても、えらが隠れて、すっきり見えるんですよね。本人が美容院でオーダーしたとは思えないから、みさきの美容師さんが気を利かせてカットしたと見た。

そして、ラストで初めて髪をおろすシーンが出てきます。これは、完全に「キャラチェンジ」の瞬間を示しているなーとヘアライター的には思うところです。「登場人物の内面の変化を、髪型で表す」の典型だなあ、と。

あのラストシーンがどういう意味なのか、いろんな解釈ができるシーンだと思います。が、ひとつわかっていることは、「あのみさきは、もう、日本でドライバーをしていた時のみさき“ではない”」ということです。なぜなら、髪型がチェンジしているから。
しかも、ひとつ結びからのダウンスタイルへの変更ですから、「開放」に向かっていることが暗示されているなー、と思います。

と、いつもの通り、ヘアライターのポジショントークをして終わろうと思います。これからご覧になる方は、髪型にも注目してくださると嬉しいです。

現場からは以上です。
 

イラスト/白ふくろう舎


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