いつも通りの夏の日曜日、何の予兆もなく突然の脳卒中で倒れたフリーライターの萩原はるなさん。救急車で急性期病院に運ばれ、準備もまったくないまま入院生活が始まりました。

なぜ自分に、こんなことが起こったの? 後遺症は? 突然の事態に自分なりに向き合いながら、治療やリハビリに励む日々をレポートします。

2021年7月。子どもたちが通う学校の体育館で、異変は起こった!!


一晩中いろいろな医療機器からの電子音を聞きながらウトウトし、迎えた入院2日目の朝。病院全体が起きて今日が始まると同時に、CTスキャンを受けるために検査室に運ばれました。

私の病名は脳出血。「左脳の血管が破けて出血しており、右半身に麻痺の症状が出ている」と、担当医から説明を受けました。脳出血や脳梗塞など、いわゆる脳卒中と呼ばれる脳の病気の場合、左側の脳に問題が起きれば右半身に、右側の脳なら左半身に麻痺などの症状が出るというのです。

CTスキャンの画像を見ると、出血はとりあえず落ち着いている模様。10日前後はこの病院で不測の事態に備えつつ様子を見て、落ち着いたところでリハビリ専門病院に移るとのことでした。

新型コロナ感染対策のため、夫にも子どもたちにも、まったく会うことができないそう。そんななか私の支えになったのは、スマホの存在でした。

病室で身を起こせないままの私の手元に、看護師さんがマナーモードに設定したスマホを置いておいてくれたのです。どうやら緊急治療室でも一般病室でも、スマホの使用はセーフのようでした。

ただ、スマホの操作は両手があってこそスムーズにできるもの。右手がまったく動かない私の場合、何とかスマホを立てかけて固定し、左手でボタンを操作したり文字を入力したりせねばならないのでした。

私の職業はフリーライター。個人事業主のため、私の仕事を把握している同僚はおらず、もちろん仕事を代わってくれる人もいません。そこで同じくフリーライターの夫が、私からのLINEとパソコンメールの履歴から現在進行形の仕事先リストを作成。各所に連絡を入れてくれました。スマホでいろいろなメールが届くのをチェックしてはいたのですが、左手だけで文字を打って返送するのは難しかったのです。

ウェブサイトのタレント連載などのレギュラー仕事、倒れる前日に審査会に参加したラーメンのランキング本の取材と進行、もうすぐ校了の映画の広告記事、これから書く予定だった建築会社の社内報パンフレットの原稿……、来週からも通常通り仕事ができるはずだった私の入院のせいで、すべてが中に浮いてしまっていました。

当時、夫が担当者の方に送ってくれたLINE

ただ、すぐに夫が連絡してくれたおかげで、担当編集者たちが即座に対応してくれたようです。「こちらは何とかするので、ゆっくり治してください」「連載は一時期、こちらで巻き取ります。待っていますので!」などという担当者たちのメッセージを読んで、本当に申し訳ないと思うと同時に、素敵な人たちと仕事ができていることを強く実感しました。

 

家で待つ、夫や子どもたちの顔も浮かんできます。

私は、一人じゃない。待っていてくれる人たちがいる。もちろんハッピーな気分ではなかったけれど、決して不幸じゃないと思えた夜でした。

 
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