世界中のコロナ禍に苦しむ人たちを癒したBTS
ホン:パンさんには、メンバーの性格や相性などを見て指導し、評価する能力があったのでしょう。BTSの世界観はだんだん作られていったもので、最初から存在したわけではないと思います。
BTSはずっと、自分たちの思いを歌で表現してきました。初期は韓国の教育に対する批判を歌い、そして若者目線での社会批判、青春の痛みなどを歌ってきて、大きな成功を収めました。しかしそこで、アメリカのヒップホップスターと同じような壁にぶち当たったのです。
アメリカのヒップホップスターも最初は、「貧民街で厳しい暮らしをした」と歌い、成功して富を得ると「俺は金持ちだ」と曲のトーンが変わりますよね。では成功をおさめたBTSは、どんなメッセージを曲に込めるのか。それが、BTSが直面した最大の危機だったと思います。
そんなタイミングで、パンデミックが起きました。曲でいうと『ON』の時期からです。それ以降の彼らを見ていくと『Dynamite』『Butter』『Permission to Dance』の英語三部作で、グラミー賞に王手をかけるほどの大きな影響力を得ました。世界中のコロナで苦しむ人たちを癒す曲を歌うようになったんですね。しかも全編英語で。
私はそれがすごく賢く鋭いな、と思いました。だからといって彼らが変わったというわけではなくて、これまでと軸は同じです。今までもずっと、ARMYと疎通しながら、自分たちの苦痛や不安などを歌ってきました。
『Dynamite』は、どこへも行けない中で元気を出して立ち上がり、みんなで踊ろうという歌なんですが、それによって励まされた人が世界中にいるわけです。それがまさに、最初から目指していた「善なる影響力」というものだと思います。
小島:アイドルにとって、年齢も大きな壁ですよね。韓国の男性には兵役もありますし。
リーダーのRMはパンデミックでのライブ中断後に、ステージで前と同じようなパフォーマンスができるかどうか不安だと語っていました。一番年上のJINが満29歳(韓国の数え方で30歳)の誕生日を迎えたときも、自身の年齢への戸惑いを口にしていましたよね。一番年下のジョングクは、今年で満25歳。
彼らは爆発的な人気の最中、"残り時間"が少なくなる20代後半という大切な時期に、パンデミックにぶつかってしまった。これはすごい試練ですよね。
ただ同時に、私もその時期にファンになったように、彼らにとっては思いがけないグローバルマーケットのさらなる拡大、およびファン層の幅を広げるようなチャンスになったのではないかという気もします。
ホン:パンデミックの中でも、海外におけるK-POPの人気は落ちなかったですね。海外ファンにとってK-POPは、もともとデジタルカルチャーだからです。SNSでコミュニケーションを取れるし、パンデミックでも海外のファンにとっては状況的にはさほど変化はありません。ツアーが見られないくらいです。
むしろずっと家にいるので、コンテンツを見て、SNSをする時間が増えました。そんな状況の中、オンラインコンサートが活発になりましたね。私もオンラインコンサートを見て書き込みをチェックしたのですが、「オンラインコンサートのほうがいい」というファンもたくさんいました。
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