K-POPアイドルの年齢の壁。30代以降のキャリアはどうなる?

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4月にはラスベガスでコンサートが開催された

ホン:海外のファンからすれば、コンサートのために飛行機に乗って海外に行かなくてはならなかったり、アイドルが自分の国に来たとしてもチケットが手に入りにくかったりします。韓国の人でも、主婦の方など簡単に夜は家を出られない方も多いです。そういう人達でも、コンサートをリアルタイムで楽しむことができるようになったのです。

私はそんな書き込みを見て、韓流というのはもともとデジタル文化なんだということを再確認しました。もともとデジタルで広がった文化だからこそ、対面でコンサートができなくても影響を受けなかったのではないでしょうか。BTSだけでなく、K-POP全体が成長しました。

 

小島:世界有数のIT先進国である韓国の強みが生きたのですね。一方で、アイドルの年齢の壁についてはいかがでしょうか。日本では40代まで活躍する男性アイドルグループも珍しくないですが、韓国のアイドルは、非常に回転率が高く競争が激しいと言われていますよね。

BTSは、兵役から戻ってきてパンデミックが明けた後も、30代でグローバルなキャリアを築くことができるでしょうか。

ホン:兵役から戻ってからのキャリアについては、本人たちにもわからないと思いますが、BIGBANGが兵役から戻ってカムバックしたことが話題になりました。以前は、韓国のアイドルグループは7年で解散したり、軍隊に行くと再起できないケースが多かったのですが、K-POP業界全体が少しずつ変わってきていると思います。

BTSは、2年間のパンデミックでも人気を落とすことなく乗り越えてきました。これは私の個人的な考えですが、もしも彼らが一斉に兵役に行って戻ってこられるなら、たくさんのコンテンツを準備しておけばカムバックは難しくないのではないかと考えています。

小島:それが良い前例になるといいですね。リーダーのRMも以前ライブのトークで、「35歳になってもこのステージに立ちたい」と話していましたが、運動能力的には10代、20代がピークでも、その後に人として時を重ね成熟していく彼らの姿を見たいです。

今回は大変興味深いお話を伺えて、本当に感謝しております。ありがとうございました。

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オンラインで対談するホン教授と小島さん


今回の対談を終えて、小島慶子さんが感じたこととは……


ホン教授、とても気さくで親しみやすいお人柄で、対談も和やかな雰囲気で進みました。BTSの魅力と独自性、その人気が世界規模になった構造的な背景をわかりやすくお話しして下さいました。

韓国と日本には、少子高齢社会や格差拡大、ジェンダーギャップなど共通する課題があります。
韓国では1997年のIMF危機以降、グローバル人材の育成を掲げて小学3年性から英語を正規科目とし、早期英語教育ブームが起きました。その結果、教育格差が広がる一方で、英語力の高い人材が育っています。これも韓国のエンタメ産業のグローバル展開には有利に働いたのかもしれません。
K-POPアイドルにも、小学生のときから海外留学したBLACKPINKのジェニーのように、英語に長けた人が少なくありませんよね。日本では2020年に小学3年生からの英語教育が必修化されましたが、今後は韓国同様に、英語教育格差が広がりそうです。

そしてホンさんが指摘するように、デジタル技術もK-POPおよびBTSの世界的な人気の推進力になっています。韓国は高速インターネット回線やスマートフォンの普及率が世界トップクラスで、生活全般でデジタル化が進んでいるIT先進国。英語力強化やデジタル化の推進において、日本が韓国に学ぶべき点は多いでしょう。

なによりBTSが世界に受け入れられたのは、言語の違いを超えて伝わる強いメッセージ性と存在感ゆえ。彼らの才能を尊重して最大限に引き出し、ピンチをチャンスに変えるパンプロデューサーの才覚と哲学は、ビジネス手法としてだけでなく、若者を育てる教育論としても興味深いと思いました。

コロナ禍に世界中の人々を癒したBTS
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1 写真:Mydaily/アフロ
2 写真:Lee Jae-Won/アフロ
3 写真:Backgrid/アフロ
4 写真:AP/アフロ
5 写真:AP/アフロ
6 写真:ロイター/アフロ
7 写真:代表撮影/ロイター/アフロ
8 写真:Lee Jae-Won/アフロ

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『BTS オン・ザ・ロード』
ホン・ソクキョン 著
桑畑優香 翻訳
2021年6月11日発売
A5変型判 272頁
定価:本体2100円
発売・発行:玄光社

BTSが切り開いた世代・文化・人種・ジェンダーに対する新しい考え方によって、世界地図はどう再配置されたのか。そこから生まれる、新しい文化と享受体系とは。そして、BTSは、どうやって世界で最もパワフルな現象を作ることができたのだろうか。

本書ではその理由を、韓国でも最高レベルの韓流分析家、ソウル大学言論情報学科ホン・ソクキョン教授がBTSのヒストリー、文化的、社会的、メディア的な観点から詳細なデータやグラフとともに多角的に解き明かしていきます。

取材/小島慶子
翻訳/桑畑優香
担当編集/小澤サチエ
 

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