こんばんは。編集・川端です。
「真夜中の読書会〜おしゃべりな図書室」、第106夜をお届けします。

今夜は目前に迫った大型連休におすすめの小説を3作品ご紹介します。
高級住宅地で起こる事件、母親を介護する娘のお話、病院で起こる連続不審死……といずれもちょっと怖いお話です。

 


<今夜の勝手に貸出カード>

『誰かがこの町で』佐野広実さん

主人公の真崎雄一が働いている法律事務所に、望月麻希と名乗る若い女性が「自分は孤児で19年前に失踪した家族の秘密を知りたい」と訪ねてきます。
望月一家が住んでいた高級住宅街・鳩羽(はとは)地区がこの物語の舞台です。この街の住人で、息子を誘拐事件で亡くした木本千春の視点と、望月一家失踪の真相を探る真崎の二人の視点で、この街の恐ろしい秘密が徐々に明らかになっていきますーー。

ある種の同調圧力による“都会的な村八分”が描かれており、架空の街の常軌を逸した設定ではあるのですが。「もし自分が住んでしまったら?」と考えると、果たして反旗を翻すことはできるのか……。絶対ウイルスに感染しない徹底管理やテクノロジーと自給自足の進んだニュータウンがもし今後できたら、こんな感じになるのでは? とじわじわリアリティを感じて怖い作品です。

E病院で入院患者の連続不審死が起こります。みんながアヤシイとささやくのは看護師の真中さん。コミュニケーションが苦手で不器用なため問題児扱いされています。事件の調査を始めた週刊誌の記者が取材として話を聞いていく体裁で、同僚たちや患者の家族など、11人の独白形式で章が進んでいます。みんな言ってることが違うし、本当のことかもわからない。果たして真中さんが犯人なのかーー。

柚月裕子さん初のオムニバス短編集です。非常に短い短編が11個収録されています。表題作「チョウセンアサガオの咲く夏」は、母の介護を続ける娘の物語。精神科医が主人公の「お薬増やしておきますね」など、え? そういう話なの! と読者の予想を裏切る鮮やかなラストが見事です。

柚月裕子さんの重厚な長編もいいけれど、旅へ向かう電車の中などはちょっとエンタメ性のある短いホラーもいいですね。


【第106夜】連休にじっくり読みたいちょっと怖い小説3選
 


上記をタップすると音声が流れます。音量にご注意くださいね。
下記のポッドキャスト各種プラットフォームでも配信中です。プラットフォームによって配信日時が前後することがあります。ご了承ください。ご視聴はいずれも無料です。

Voicyでも配信スタートしました!
Amazon musicでも配信スタートしました!
Spotify
Google Podcasts
Apple Podcasts
Anchor
Breaker
Pocket Casts
RadioPublic


リクエスト、ご質問も引き続き募集しております。番組内で採用された方には、バタやんがセレクトした本を1冊プレゼントいたします。

<次回>
5月4日(水)22時配信予定

下記よりご感想、メッセージをお待ちしております。


撮影/塚田亮平

 

 


前回記事「井上荒野さんの『生皮』を読まなくては。指導者からのセクハラの罪深さ【真夜中の読書会】」はこちら>>