温かな言葉に癒されると話題の産婦人科医、高尾美穂先生。女性の揺れがちな体や心の悩みを軽くしてくれる新刊『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』(講談社)が発売となりました。この本に込められた高尾先生の思いを、あらためて伺ってみました。

 

「大丈夫」という言葉には、目に見えないパワーが宿る


――今回の新刊は、「生理とうまく付き合えば大丈夫」「更年期は必ずやってくる。でも大丈夫」「体を動かせば大丈夫!」「こころが不安でも大丈夫」などという章に分かれていて、女性が人生において直面する、さまざまな体と心の問題について、“これを知っておけば大丈夫”というたくさんのお話が紹介されています。
高尾先生は、この本のタイトルにもなっている「大丈夫」という言葉が、もともと大好きだとおっしゃっていましたよね。

 

高尾先生:そうなんです。何か不安なことがあったとき、信頼できる誰かに「大丈夫」って言われたり、自分で自分に「大丈夫」と言い聞かせられたら、心を強く保てたという経験は誰にでもあるんじゃないでしょうか。「大丈夫」という言葉には目に見えないパワーが宿っているように思うんです。

 

――女性は人生の大半を女性ホルモンに振り回されることもあって、不安になることも多いので、確かに「大丈夫」という言葉はとても力になる気がします。

高尾先生:この本で言いたかったのは、普段から自分で「大丈夫」と思えるような取り組みをしておくことが大事だということです。
たとえば産後だったり、更年期だったり、女性は人生で心や体が揺さぶられる場面がいくつもあると思うけれど、それは自分のせいじゃなくて、女性ホルモンのせいだって知っておくだけでも「大丈夫」と思えるかもしれません。

それに、今は対策方法もさまざま用意されていて、何をすれば軽くすることができるかわかっている時代。自分でできることはいろいろあるから、それを知っておいて実際にやっておけば、自分で「大丈夫」と思えることが増えて、人生が楽になる。
そんなふうに、自分に向けて自分でOKを出せるようにしておくことが大事というのが、この本の大事な軸なんですよね。

 

 

――「対策方法がある時代」とはいえ、周りの更年期の不調に悩む女性たちと話していると、ものすごくつらい状態なのにHRT(ホルモン補充療法)という基本的な選択肢があることも知らなかったりします。

高尾先生:正しい情報を持っている人と持っていない人の差は大きいですよね。更年期の対策もまだ知らない人も多いし、知っていても正しく理解していない人もいます。
でも、心と比べたら体はシンプルで、しておくといいこともはっきりしている時代だから、あらかじめ知っておけば、いざ困ったら試してみることができる。

更年期は特に、心にも体にもいろんな不調が出るために、みなさん頭の中が混乱してしまっていることが多いですが、更年期の不調の改善のためにできることは、「足りないエストロゲンを足す」「全体を底上げする漢方」「生活習慣の改善」の3つとシンプル。この3つがあると知っておけばいいんです。

不調が出たとき、何もできないと思うと霧の中にいるみたいになってしまいますが、できることがあるとわかると、視界は開けますよね。
そのためにも、この本を役立てていただけたらと思います。

 
 


誰にでも大丈夫な部分と、大丈夫じゃない部分がある


――今回の新刊には、女性の人生におけるさまざまな悩みが取り上げられていますが、自分にも当てはまる悩みもあれば、自分では思ったこともないような悩みもあって、悩みって本当に人それぞれなんだなとも思いました。

高尾先生:みんな何かしら大丈夫じゃない部分を持っているけれど、大丈夫な部分も持っている、ということなんです。
この本ではいろんなケースの悩みが紹介されているから、自分に当てはまらないことだったら、“このことについては、自分は不安を感じずに過ごせているんだな”と気づくことができるし、自分も同じように不安に感じることなら、“こんなふうに考えたら大丈夫なんじゃないか”という提案を手に入れることができる。

――確かに、誰にでも、“ここは大丈夫”という部分は必ずありますもんね。

高尾先生:そうそう、全部が全部、大丈夫じゃないってことはないですからね。

 


高尾先生の、人の心をとらえる話術の秘密


――高尾先生は、お医者さんでありながら、一般の人にもわかりやすい言葉でお話ししてくださるところも人気の理由なのだと思います。

高尾先生:医者は学会などで医者同士で話すことが多いので、医者に対して話すのはみんな得意だと思うんです。医者なら誰でも持っている辞書の言葉で話せますからね。でも一般社会では、みんなそれぞれ持っている辞書が違うから、医者以外の人に話すときにも、お互いに共通の辞書の言葉で話しているという意識をもてるかどうかですよね。話したって、伝わっていなければ話す意味ありませんから(笑)。

先生が勤めるクリニック「イーク表参道」の診察室にて。

――診察もして、ヨガも教えて、音声番組の配信もして、メディアの取材も受けてと、毎日ものすごく忙しいのに、勉強も欠かさない、そんな高尾先生のモチベーションは、一体どこにあるのでしょうか?

高尾先生:勉強って、私にとって楽しいことなんですよね。“このことをあの人に伝えたら喜ぶかも!”とか思うから、それがモチベーションになるんです。なんとなく学ぶよりも、これをいつアウトプットするぞと思って学ぶのでは、絶対に入り方が違うわけで。

今回の本を出すのもアウトプット。そして最終目的地は、そのアウトプットを受け取ってくれた人が、いい感じに良く変わっていくこと。
私は健康に関わる仕事をしているから、その人の人生が良い状態になっていくところまで隣で眺めていられたら最高、と思ってます。

自分が診ている患者さんと違って、本を読んでくれた人はどんなふうに変わっていくかを知ることはできないけれど、きっと良く変わっていくと信じられるんです。だから、今回の本もできるだけ多くの人に読んでいただけたらとても嬉しいです。

そんな高尾先生の思いがいっぱい込められた新刊「大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111」。すべての女性に読んでいただきたい1冊です。

<新刊紹介>
『大丈夫だよ 女性ホルモンと人生のお話111』

著:産婦人科医  高尾美穂
定価:本体1600円(税別) 講談社


女性ホルモンに振り回される人生前半の40年と、ホルモンがなくなり落ち着く後半40年、そしてその間にある更年期という嵐の10年間。
自分がいま人生のどの時点にいて、体と心はどういう状況になっているのか。それが把握できていれば、対策はあるのです。
この本では、高尾先生が日常でできる解決策を教え、解決策がないことならば違う角度でのとらえ方を提案。また、女性がラクになる生き方のアドバイスもたっぷりと。
女性ホルモンとうまく付き合い、自分の人生を自分でデザインしていくために。
高尾先生が優しく語る111の「こうすれば大丈夫」を、ぜひ生きる指針にしてみてください。


撮影/馬場わかな
ヘア&メイク/レイナ
取材・文/和田美穂
構成/松崎育子(編集部)


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