創刊42年の歴史を誇るポップカルチャー誌『BRUTUS』。日本におけるワインブームの火付け役でもあり、たびたびワイン特集を組んできた同誌だが、5月16日に発売されたのがBRUTUS初となる丸ごと1冊ナチュラルワイン特集号。その表紙を飾るのは、佐々木希さん。
ナチュラルワイン特集号で、なぜ佐々木希さん? と思う人も多いかもしれない。実は彼女、ナチュラルワインを愛して6年。「毎日ナチュラルワインのことばかり考えているかも(笑)! こんなにも何かにハマったことは初めてです」とのこと。
そこで、佐々木希さんにナチュラルワインに出会ったキッカケから、どんなこところに惹かれるのかなどたっぷりお聞きしました。


ナチュラルワインとの出会いを教えてください。

佐々木希さん(以下、佐々木) 5〜6年くらい前にワインに詳しい友人宅で初めて飲みました。すごく衝撃を受けたのでその時のことを覚えているんです。今までもワインは好きでしたが、それとは全然違う!! と驚いて。銘柄などは覚えていないのですが、たしか海外のワインだったと思います。フルーツを感じる爽やかさでとても飲みやすくて、あの最初の1本は何だったんだろうなぁ。そこからすっかり夢中になるのですが、妊娠をキッカケにしばらくナチュラルワインを飲めない期間がありました。

 

飲めない期間によって、逆にナチュラルワインへの愛がさらに高まりそうですね(笑)。

佐々木 私は飲めないけれどまわりは飲んでいるので、見たり聞いたりメモしたり。このエチケット好きだなぁと思ったワインは、飲んでいるそばから感想を聞いたりしていました。授乳期間を終えると、外食は基本的にナチュラルワインありきで決めることがほとんど。気になるお店には足を運び、色々質問をさせてもらっていると「このお店も好きかもしれないよ」と教えてくださったりして。ナチュラルワインを扱う方々は皆さん結びつきが強いので、商売敵なんて思わずどんどん教えてくださったり紹介してくださるんです。皆さんすごくハッピーでオープンな空気感で、楽しいこと、いいものはみんなで共有しようという気持ちが強い方が多いんです。そういう部分も、ナチュラルワインを好きな理由の一つ。
外食だけでなく、ワインショップで買って家で飲むことも多かったので、ナチュラルワインの為にワインセラーも購入。レアな1本から定番のお気に入りまでびっしり入っています。

写真:伊藤徹也/©︎マガジンハウス

そのお気に入りワインの中で、今回のBRUTUSではお気に入りの1本を紹介していますよね。決めるのは大変だったのでは?

佐々木 そうなんです。好きなワインがたくさんあるので、1本に決めるのは本当に大変でした。今回は「Fattoria AL FIORE Cirol 2020」を紹介させて頂いたのですが、アルフィオーレのネコシリーズ・チロルはずっと大好きで毎年楽しみにしているんです。以前、よく行く角打ちのお店に伺ったら、たまたま造り手の目黒さんがいらっしゃるタイミングがあり、興奮のあまりいかにこのシリーズが大好きかを熱くご本人に伝えてしまって(笑)。
その時にいつかお邪魔させてくださいとお話させていただき、先日ようやくワイナリーにお伺いすることができました。元小学校の体育館をリノベーションして造っているワイナリーなのですが、目黒さんの熱意とチャレンジ心が強く、日本酒の酒造と容器や搾りかすを共有したり、近くに葡萄畑を造り始めていたりと、挑戦しながら前進していく姿を肌で感じ、ここのワインに惹かれる気持ちが腑に落ちました。生産者の方にお会いして直接お話を伺い、実際にワイナリーに足を運ぶと、感動の連続。ますますその方のワインが好きになりますし、すごく勉強になります。それに、熱意溢れる姿に触れることで、自分の仕事も頑張ろうって改めて思わせてくれます。

ワイナリー巡りはどんな風に決めるのでしょうか? 何ヵ所足を運びましたか?

佐々木 ワイナリーは今まで7ヵ所足を運んでいます。伺ってみたい場所はたくさんあり、ひとつひとつクリアしていっています。次は北海道に行きたいなぁと計画しています。お邪魔させていただき、最初に生産者の方の顔を見た時がとても嬉しくて「いつも飲んでいますー! こんなところが好きで……」と伝えられる瞬間がまたとても嬉しくて。ワイナリーで出会った方と、また違うワイナリーで出会ったりすることも意外と多いんです。みなさんお手伝いに行き合ったりしていて。そういうところがまた素敵だなぁと思っています。私は葡萄の収穫の時期のお手伝いが特に好きなんです。みんなで葡萄を収穫しながら、話したり色々教えて頂いたりする時間に幸せを感じます。さらにワインを飲ませて頂いたり、その土地の美味しいお店などを教えて頂いたり。ワイナリーを中心に旅が構成されています。

写真:伊藤徹也/©︎マガジンハウス

佐々木希
1988年2月8日生まれ。秋田県出身。2006年芸能界デビュー。以降映画やドラマ、CM、雑誌など多岐に渡り活躍中。現在、KTV・CX「所JAPAN」でレギュラーパネラー、NHK Eテレ「すてきにハンドメイド」で東京MCとして出演。またワンマイルウェアブランド「iNtimité(アンティミテ)」を手掛ける。


ワイナリーに足を運ぶことはもちろん、デイリーにナチュラルワインを楽しんでいるかと思うのですが、お気に入りのお店はありますか?

佐々木 好きなお店は本当にたくさんあるのですが、ナチュラルワインを買うなら「no.501」「wine shop flow」「リカーランドなかます」「VIRTUS」などが多いかもしれません。そして、今回の表紙を撮影させていただいた「アヒルストア」でも買っています。それに、友人におすすめのお店を教えてもらったらすぐに足を運びます。ワインを買う時は、信頼できる方と話しながら一緒に選ぶことが多いのですが、おすすめを提案して頂いて、また好きなワインが少しずつ増えていく。ナチュラルワインを勉強しているというより、こういう形で自然と好きなものが増えて世界が広がっていく感じがあって、それがとても楽しいなぁと思います。


自然に好きなものが広がっていく、それが佐々木希さんにとってのナチュラルワインなんですね。

佐々木 そうなんです。私にとって、ナチュラルワインは“楽しみ”。楽しく飲んでいて、楽しくてメモしていたら、いつの間にか自分の知識となっていた、というような。こうして、楽しくて知りたいことが、結果、勉強にもなっていくという流れが1番幸せな学び方なんじゃないかなと思うんです。嫌いなリストを増やすのではなく、好きなリストをどんどん増やしていきたい。もちろん、例えばこんな肉料理にはこんな赤ワインが合う、などの相性はあると思います。
けれど、自由でいいと思うんです。組み合わせなどを先に考えるのではなく、まず基本は感覚でいたい。気候やテンション、体調、誰と飲んでいるのか、話している内容、そういうことで飲みたいワインは変わるもの。すごく晴れている日には酸味のある微発泡を飲みたくなるし、重たいワインが続いた後は急に軽い微発泡に戻りたくなる時もある。シリアスな話をしている時は重ためのオレンジが飲みたくなったり、そうしてその時の感覚に合うものを素直に楽しむのがベストなんじゃないかなぁと思っています。もちろん知識はあるといいけれど、それに縛られないでいたい。縛られることなく自由に好きな気持ちを大切にしながら楽しんでいくということが、ナチュラルワインという存在にも沿っているんじゃないかなと思うんです。

気になるお店には足を運んでいる佐々木希さん。
この時は、ワイン好きの友人たちと目黒〈アンジュール〉へ。
おすすめを色々飲みながら、店主の宮内亮太郎さんにワインについてお話を伺っていました。

【写真】佐々木希「これまで訪れたワイナリーは8軒」おすすめのナチュラルワインを一本選ぶなら?
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取材・原稿/柿本真希