エディター松井陽子さんのスタイリングにもよく登場する「もはや体の一部のよう」という最愛のファッションアイテムの魅力をお届けする連載企画。前回に引き続き、ニットとカットソーのブランド、SLOANE(スローン)で、ものづくりの背景を伺いました。
名脇役と名高い「SLOANE」
定番ニットが長く支持される理由
「スローンのニットは美しいファンデーション」。そう前回の記事で綴りましたが、 コスメカウンターにずらりと並んだファンデーションと同様、スローンのニットのラインナップの豊富さも圧巻! この夏私が新たに追加した1枚、プレスの森内さんのおすすめの1枚などなど、今回はそれぞれの魅力をご紹介したいと思います。
細部へのこだわりの数々が、
体を通した時の佇まいの美しさに
スローンのニットは今年の春夏だけでも、そのラインナップは実に約50種類も! こんなにたくさん展開しているとは知らなかったので、まずはその数に驚きました。素材や撚り、編み方はもちろん、サイズバランス、そして色。掛け算で増えるのですから、それはプレスルームに並んだニットのラックもこの量になるわけです。
ゲージごとに工場も異なり、それぞれにこだわりがぎっしりと詰め込まれています。パターンで作る布帛やカットソーの洋服とは異なり、ニットは編み目を増やしたり減らしたりしながら形にし、パーツを縫い合わせるリンキングという工程を経て1枚のアイテムが完成します。それは「フルファッション」と呼ばれ、
「糸や撚りはもちろんですが、スローンの特徴といえるのは、着ていただいた時のシルエットですかね。リブの仕様などのディテールもそうですが、肩まわりや袖の作りはかなりこだわっています。例えば女性が男性サイズを着た時に、肩まわりが立体的で美しく収まると、だらしなく見えにくいです。サイズバリエーションが多く、お好みで選んでいただきたいからこそ、どのサイズで着てもらっても収まりがよくきれいに見えるということを大切にしています」。
トレンドを意識したシーズンカラーもあったり、パッと鮮やかな色にも目が留まります。実際、明るい色は意識的にうんと明るくしているそうです。というのも、スローンのお客様は比較的年齢層も高め。年齢を重ねた人にきれいな色はとてもよく映えるから、という小峰さんのお話も素敵だなと思いました。シンプルで美しいというのは、とても深い。つくづくそう思います。
スローンの春夏の定番。
天竺コットンニット
私がこの夏用に選んだのは、<14ゲージ 天竺コットン>シリーズのポロニット。スローンの定番アイテムです。
ポロニットは大好きなアイテム。学生時代ゴルフ部だったのでポロシャツに永遠の愛を感じるのか。首元が抜けているのでネックレスが合わせやすいのと、シャツより気楽で、Tシャツやクルーネックのニットよりもよそ行きムードが出ることを知っているからか……? 並んでいるとつい手にとってしまいます。特にウエストがリブ仕様になっているのはボトムスとのバランスが取りやすく、とても着回しやすいんです。
このニットは、着ると肌にしっとりと馴染むような柔らかな心地の良い風合いもですが、襟の収まり、肩から腕にかけてのすっきりとしたシルエットもとてもきれい。それも購入の決め手になりました。そして、それらも着回しやすさのポイントになっています。
「このニットは、デイリーに着こなしてもらいたいから、素材はあえて最高級、最上級ではないんです。もちろん上質ですよ。でも、もっと高級な糸はたくさんあります。ただ、それだと繊細過ぎて着るのがもったいなくなってしまうということも。コットンならではの柔らかで程よくハリのある風合いを生かして、きれいめに見せつつも、デイリーに活用していただきやすいように提案しています」という小峰さん。そうと聞いたら、このポロニットもTシャツを着るように、もっとデイリーに活用したいと思いました。その時は、首元をパールのネックレスで飾って。王道ですが、このコンビネーションはやっぱり大好きです。
上質なオーガニックコットンを丁寧に編み立てた
ブランドが誇るスペシャルな一枚
繊細な糸が繊細に編み立てられた、独特の手触り。空気とともに編まれたような“ふんわり感”というよりは、繊細に目の詰まったハリのあるカットソーライクな心地の良さと、しなやかな落ち感に驚いた一枚。小峰さんに聞いてみると、「ニットブランドの意地というと大袈裟ですが、このニットは素材から技術に至るまで特別です。スーパーハイゲージ(30ゲージ)という細番手ならではの独特のハリ感とドレープの美しさに好評をいただいています」とのこと。納得です!
コットンとポリエステルの良いところを融合!
撥水機能のある梅雨にもぴったりのニット
ミモレのスナップにも登場されているので、ご存知の方もいらっしゃるかと思います。ファッション関係者からの信頼も厚く、みんなの人気者のプレスの森内さん。森内さんが着こなしているのは、ポリエステル65%、コットン35%のブレンド糸を使用した18ゲージの天竺、ポリエステル×コットンのウルトラ撥水シリーズ。化繊と聞くと、空気がこもりそうとか、素肌に馴染むのかな?などと考えてしまいがちですが、これもちゃんと「理由のあるポリエステル」です。
ポリエステルの糸はコットンに比べて軽く、コットンの心地の良い風合いを残しつつもさらりと着こなせるというのがポイントなのだとか。確かにコットン100%のニットに比べると軽量ですし、撥水加工を施しているから雨の日や湿度の高い日にもジンメリせず、おうちでお洗濯できるというイージケアも汗ばむ季節にはうれしい限り。心地の良いハリ感、清涼感のあるほんのりとした透け感も、暑い夏にも重宝しそうです。森内さんのように、色違いのノースリーブとカーディガンを合わせれば、セット感も出て全身の印象もすっきり、上品でとても素敵です。
上品につやめく最高級のシルク素材。
太めのリブが上半身をよりすっきりと
仕事仲間である大人の女性たちに大人気なのが、こちらのシルク100%のワイドリブニット。この繊細な美しさは最高級のシルクを使用しているからこそ。素肌に心地よく、優しくフィットする太めのリブ。このニットを着ている女性にはつい見惚れてしまう、とてもエレガントなニットです。ちょうど肘にかかるくらいの5分袖もほどよくて、腕をより長く見せてくれる気がします。ふんわりとしたニュアンスカラーでもリブの効果ですっきりとした印象に。
ご紹介したのは、ごく一部。どのラインナップも「確かな理由」があって、唯一無二の魅力があります。コーディネートを洗練し、これがあれば大丈夫と思わせてくれる。やっぱり頼れるファンデーションになってくれるスローンのニットは、これからもずっと私のワードローブには欠かせないのだと改めて実感しました。これからも、少しずつ丁寧に集めていきたい、そう思います。
次回は、これもまた愛用中の愛用品、スローンのTシャツの魅力について迫ります。どうぞお楽しみに!
左)松井陽子(まついようこ)●ファッションエディター&ライター。湘南在住。雑誌やカタログ、広告など広いジャンルで活躍中。mi-molletで月に2回アップされる「スタッフの今日のコーデ」も人気。Instagram: @yoko_matsui_0628
右)小峰明彦(こみねあきひこ)●『スローン』ディレクター。大手アパレル会社で紳士服の企画デザインを経て、無類のニット好きが高じて2016年に日本初のニットの専門ブランドとして『スローン』を立ち上げる。オリジナルのニットにとどまらず、こだわりを詰め込んだカットソーも大人気。
【写真】こだわりが詰まったSLOANE(スローン)の名品の数々
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撮影/目黒智子
構成・文/松井陽子
編集/朏 亜希子(mi-mollet編集部)
撮影協力/SLOANE
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